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親の相続をきっかけに、実家をきょうだいと共有名義にしたものの、「売るべきか残すべきか」「誰がどこまで負担するのか」が決まらないまま時間だけが過ぎている……。こうしたご相談は少なくありません。
その中で、「共有持分」という言葉だけは聞いたことがあっても、どこまで自分一人の判断で動けるのか、そもそも何を共有している状態なのかが、はっきりイメージできていない方も多いと思います。
本記事では、まず共有持分の基本的な考え方から、一人でできることとできないこと、共有のまま放置した場合に起こりやすい問題、そして自分の持分だけを手放すための主な方法について、順番に解説します。
※本記事は、2026年1月時点で確認できる法令・制度・公表資料をもとに作成しています。
この記事でわかること
- 共有持分の基本的な仕組みと考え方
- 共有名義や区分所有との違い
- 共有不動産で一人では決められない内容
- 共有状態を続けたときに生じる負担やトラブル
- 自分の共有持分だけを手放す方法と、専門業者による買取のメリット
目次
共有持分とは「一つの不動産を、複数人で所有する権利」のこと

共有持分とは、一つの不動産を複数人で所有するときに、それぞれが持つ「権利の取り分」のことです。
土地や建物を実際に区切って分けているわけではなく、「この家・土地のうち何分のいくつを持っているか」という形で権利を分け合っているイメージです。夫婦で住宅を購入したり、親の死亡後に兄弟で実家を相続したりする場面でよく見られます。
単独所有の不動産とは違い、共有の場合は自分だけで何でも決められるわけではありません。売却や建て替えといった大きな動きは、他の共有者との話し合いが前提になり、意見が割れてしまうと「動かしたくても動かせない状態」に陥りがちです。
どこまでなら自分の判断だけで動けて、どこからは他の共有者の同意が必要になるのか。その線引きを知っておくことが、共有不動産と向き合ううえでの土台になります。
1.1 共有名義・区分所有との違い
「共有名義」「区分所有」という、似たような言葉を耳にしたことがある方もいると思います。
「共有名義」は、登記簿に名義人が複数載っている状態を指します。このとき、名義人に割り振られている取り分(持分割合)が「共有持分」です。
つまり、共有名義は「登記の状態」、共有持分は「権利の割合」と捉えると分かりやすいでしょう。
一方、「区分所有」は仕組みが異なります。建物全体を分けたうちの自分の部屋(専有部分)については単独の所有権を持ち、原則として自由に売却や賃貸ができます。その一方で、エントランスや廊下などの共有部分については、他の所有者と一緒に所有する形になります。
整理すると、
- 共有持分
不動産”全体”を複数人で共有している(特定の部分が自分のものと決まっているわけではない) - 区分所有
専有部分は単独所有、共有部分は共有
という違いがあります。
共有不動産で「一人でできること・できないこと」の線引き

共有不動産の場合、「自分一人の判断でできること」と「他の共有者の同意が必要なこと」が、法律上はっきりと分けられています。
これは民法のルールに基づくもので、共有者の人数や持分割合にかかわらず、基本的な考え方は共通です。ここでは、その代表的な区分を見ていきましょう。
2.1 共有者の一人で可能な行為(保存行為)
保存行為とは、不動産の価値を守り、傷みや劣化を防ぐための行為のことで、「共有者の一人だけ」で行うことが認められています。
例えば、次のような修理や補修などが保存行為に当たります。
- 雨漏りの応急修理
- 屋根や外壁の破損部分の補修
- シロアリ被害の防止措置
- 老朽化による倒壊を防ぐための応急処置
いずれも「壊れたり劣化したりするのを防ぐための最低限の対応」であり、建物の使い方自体を変えるものではありません。
一方で、リフォームや用途変更など、見た目や機能が大きく変わる工事は保存行為には当てはまりません。これらは別の区分として扱われます。
2.2 過半数の同意が必要な行為(管理行為)
管理行為とは、不動産の利用方法や日常的な運用方針に関わることで、「持分の価格で過半数」の同意があれば決定できるとされています。例えば、Aさん50%、Bさん30%、Cさん20%で共有している不動産なら、AさんとBさんが賛成すれば過半数を超えるため、管理行為として成立するイメージです。
代表的な例としては、
- 第三者への賃貸*
- 管理会社との契約
- 共用部分の利用方法の取り決め
- 修繕計画の決定
*通常の管理の範囲といえる内容・期間のもの。長期契約など、内容によっては扱いが変わる場合もあります。
などが管理行為に該当します。
「日常的な管理や運用に関する判断」は、一人の単独判断では難しいものの、全員一致までは求められない、という位置づけです。
2.3 原則全員一致が必要な行為(変更行為)
変更行為とは、不動産の性質や使い方を大きく変えることで、原則として共有者全員の同意が必要とされています。
具体的には、
- 建て替え
- 取り壊し
- 不動産全体の売却
- 大規模な用途変更
などが該当します。
一人でも反対していれば、建て替えや取り壊し、不動産全体の売却といった判断は進められません。そのため、話し合いが平行線のまま長期間動かなくなってしまうケースも見られます。
特に相続による共有では、生活環境や考え方の違いから意見がそろわず、話し合いが難航することも少なくありません。
2.4 自分の共有持分は単独で処分できる
共有不動産全体については、一人だけの判断でできることに限りがありますが、「共有持分」という権利の一部については考え方が異なります。
自分の持分については、法律上は一人の判断で売却や譲渡が可能です。他の共有者の同意や承諾書が必ず必要というわけではなく、「自分の持っている権利だけを手放す」という選択ができるということです。
この点は、共有状態をそのままにしておくか、それとも自分の段階で整理するかを考えるうえで、大事な判断材料になるでしょう。
なお、売却後は買主が新たな共有者となるため、登記の情報などを通じて他の共有者に売却の事実が伝わる可能性がある点は押さえておきましょう。
共有持分の放置で生じる金銭的負担と共有者増加の問題

共有状態のまま実家を持ち続けていると、住んでいる人と費用を負担している人とのバランスが問題になったり、相続の重なりによって共有者が増えていったりと、次第に話がまとまりにくくなる場面が出てきます。
3.1 住んでいる兄弟との「利用」と「負担」のズレ
共有状態のまま、兄弟のうち一人だけが実家に住み続けている場合、「使っている人」と「費用を負担している人」の関係が問題になることがあります。
たとえば、実家に住んでいない側からすると、「自分は利用していないのに、固定資産税は負担している」という疑問が生じる一方で、住んでいる側としては、「日常的な管理は自分が担っている」という感覚を持っている場合もあります。
法律上は、単独で住んでいる共有者に対し、他の共有者が賃料相当額を請求することが可能です。ただ、親族間で実際に家賃請求まで踏み込むケースは多くなく、「身内同士のこと」として話がまとまらないまま、時間だけが過ぎていくケースが多いのが実情です。
こうした「利用」と「負担」のズレは、早い段階で解決しておかないと、不満として蓄積しやすく、後になってトラブルの火種となることがある点は認識しておく必要があります。
3.2 共有状態を次の相続まで持ち越すデメリット
共有状態は、そのままにしておいても自然に解消されるものではありません。
決めきれないまま共有のままにしておくと、次の相続が起きた段階で持分がさらに細かく分かれ、共有者の人数は徐々に増えていきます。
人数が増えるほど、「売るのか、残すのか」「建替えるのか、そのまま使うのか」といった大きな判断について、全員の同意を得ることがさらに難しくなります。
現時点では大きな問題として表面化していなくても、共有状態を先送りにするほど、次の世代では解消しにくいテーマへと変わってしまう可能性があります。ここが、共有状態をそのまま持ち越す大きなデメリット言えるでしょう。
共有関係から抜けるために法律上認められている4つの方法

共有不動産そのものについては、一人で進められることに限りがありますが、自分の共有持分については、個人の判断で手放すことができます。
その方法としては、主に次の4つがあります。
- 自分の共有持分だけを第三者に売却する
- 共有者全員で話し合い、任意に共有状態を解消する
- 自分の共有持分のみ放棄する
- 裁判所に共有物分割請求をして強制的に分ける
ここからは、それぞれの特徴を見ていきましょう。
4.1 自分の共有持分だけを第三者に売却する
「これ以上、共有関係に関わりたくない」という場合に、もっとも現実的なのが、自分の持分のみを売却する方法です。
ただし、権利関係が複雑な共有持分を一般の個人が購入することはまずなく、売却までに非常に時間がかかるというのが現実です。そのため、実際には共有持分を専門に扱う買取業者への売却が候補として挙がります。
この方法の最大のメリットは、他の共有者の合意を得る必要がない点です。売却した時点で自分は共有関係から離脱し、買い取った業者が新たな共有者となります。
「特定の親族との話し合いがストレス」「管理の負担からすぐにでも解放されたい」という方にとって、非常に有効な選択肢と言えるでしょう。
4.2 共有者全員で話し合って共有状態を解消する
共有者全員の意見が一致するようであれば、話し合いで共有状態を解消させる方法もあります。具体的には、以下の2つのパターンをとるのが一般的です。
- 換価分割
不動産全体を売却し、売却代金を持分割合に応じて分ける方法。 - 代償分割
誰か一人が代表して所有者となり、他の共有者の持分を買い取る方法。
しかし、実際には住み続けたい人と現金化したい人で意見が食い違ったり、「いくらなら納得して売れるか(買えるか)」という価格面での折り合いがつかずに、話が止まってしまったりすることも少なくありません。
特に共有者が多い場合や、疎遠な親族がいる場合は、合意に至るまでのハードルが非常に高くなります。
4.3 自分の共有持分のみ放棄する
「対価はいらないから、とにかく名義を外したい」という場合に取られるのが、持分の放棄です。ただし、単に「いらない」と宣言するだけでは不十分で、法的な手続き(所有権移転登記)を伴う点に注意が必要です。
登記上の名義を変更しない限り、法律上は依然として共有者のままです。そのため、固定資産税の請求や管理の連絡が止まることはありません。
また、無償で他の共有者に権利を譲ることになるため、受け取った側に贈与税が発生するリスクもあります。手続きには他の共有者の協力も必要なため、関係性が悪化している場合にはあまり現実的な方法とは言えません。
4.4 裁判所に共有物分割請求をして強制的に分ける
話し合いによる解決が不可能な場合、最終手段として裁判所に「共有物分割請求」を申し立てる道があります。共有者の一人から申し立てが可能で、まずは調停(話し合い)から始まりますが、そこでまとまらなければ訴訟へと進みます。
最終的に分割方法を判断するのは、裁判所です。分割の方法は、主に次の3つのパターンに分けられます。
- 現物分割
土地を物理的に切り分けて、それぞれ単独の所有とする方法。 - 価格賠償
誰か一人が所有権をもらい、他の共有者には持分に見合う現金を支払う方法。 - 換価分割
不動産を売却して、その代金を分配する方法。
ここで注意したいのは、最後の換価分割になった場合です。裁判上の手続きでは、裁判所が競売を命じることがあり、一般市場で売るよりも価格が安くなってしまう傾向があります。
結果として、手元に残るお金が想定より少なくなるだけでなく、弁護士費用や長い月日がかかり、親族間の亀裂も残りかねません。そのため、共有物分割請求はあくまで「自力ではどうにもならない時の最後の手段」と捉えておくのが賢明です。
専門業者による共有持分買取を利用するメリット

共有関係から抜け出す方法はいくつかありますが、その中でも「自分の持分だけを売却する」のは、自分一人の判断で進められるため、周囲との調整を気にせず踏み出せる方法です。
ただし、共有持分のみを欲しがる個人はまずいないため、一般的な不動産仲介で買い手を探すのは現実的ではありません。
そこで有力な解決策となるのが、共有持分を専門に扱う買取業者への売却です。 専門業者による買取を利用する主なメリットを見ていきましょう。
5.1 話し合いが止まっていても、自分の判断だけで動ける
共有不動産そのものを売る場合は、誰が住み続けるのか、いつ、いくらで売るのかといった家族全員の意思を統一しなければならず、話し合いが止まってしまうケースも少なくありません。
自分の共有持分だけを専門業者に売却する場合は、こうした周囲の状況に左右されず、「自分の持ち分をどうするか」だけを自分一人で判断できます。たとえ他の共有者が「絶対に売りたくない」と言っている状況でも、自分の持分だけを手放し、固定資産税の支払いや将来の管理リスクから離れることが可能です。
家族全体の結論が出るのを待ち続けるのではなく、「自分の負担だけでも先に解消しておきたい」と考える方にとって、専門業者への売却は有力な解決策になります。
5.2 一般の買い手が少ない権利でも、現金化のメドが立てやすい
共有名義の不動産は、物件全体を自由に使えるわけではなく、購入後に他の共有者と権利調整の交渉をしなければならないといった大きな負担があるため、通常の仲介ではそもそも問い合わせすら入らないという状況になりがちです。
共有持分の買取業者は、こうした特殊な事情をあらかじめ承知したうえで、買い取った後に他の共有者と話し合って不動産全体の権利をまとめたり、再販したりすることを目的としています。そのため、売主が業者の提示した査定額や条件に納得できれば、すぐに買い取ってもらうことが可能です。
通常の不動産売買と比べると、買取価格は低くなる可能性は否めません。ただ、価格の高さだけでなく、「どのくらいの期間で現金化できるか」という確実性を含めて考えると、十分に選ぶ価値がある方法と言えるでしょう。
まとめ:共有持分に迷ったときは、まず「いくらで売れるか」を知ろう

共有持分についてのまとめ
- 共有持分は、不動産全体について複数人で権利を持つ形のこと
- 共有不動産では、売却や建替えなど大きな判断を一人で下すことはできない
- 共有状態を続けると、費用負担や人間関係が重く複雑になっていくおそれがある
- 共有関係から離れる方法としては、売却・合意による解消・放棄・裁判手続きなどがある
- 共有持分の買取業者を利用すると、自分だけの判断で、比較的短期間で売却できる
共有状態の実家について、今すぐ売るかどうかまでは決めきれない方も多いはずです。兄弟との関係や思い出、将来の住まい方などを考えると、「とりあえず今は様子を見ておきたい」と感じるのも自然なことです。
「今すぐ決められない」という状態でも、ご自身の持分の価値や選べる選択肢を知っておくことは、将来の判断を楽にしてくれます。
ラクウルでは、共有持分・実家相続・ご兄弟との関係に配慮した売却に関するご相談に特化した窓口を設けております。査定だけのご利用、情報収集だけのご相談も歓迎しております。もちろん、ご相談いただいたからといって売却を急かすことはありません。
まだ売ると決めたわけではない、まずは選択肢を整理しておきたい、といった個別のご事情がある方も、どうぞお気軽にご相談ください。
この記事のまとめQ&A
共有持分(共有持ち分)とは何ですか?
共有持分とは、不動産を複数人で所有している場合にそれぞれが持っている “取り分” の権利です。一つの不動産全体ではなく、各共有者が自分の割合分の権利を所有している状態を指します。
共有不動産と共有持分はどう違いますか?
共有不動産は、複数人で一つの不動産を所有している状態そのものを指し、共有持分はその共有不動産の中で各共有者が持っている “権利の割合” を意味します。
共有持分の割合はどのように決まるのですか?
共有持分の割合は、共有者同士の合意や遺産分割協議書、相続時の評価などによって決まります。契約書や遺産分割協議書に明記されている割合が基準になります。
共有持分を持っていると、どんな権利がありますか?
共有持分を持っている人は、その不動産に対して権利を主張できます。例えば、持分に応じた利益配分を受ける権利や、持分売却の自由などが含まれます。ただし単独で不動産全体を自由に使う権利はありません。
共有持分を売ることはできますか?
はい。共有持分は、あなたの持分については他の共有者の同意がなくても第三者に売却することができます。ただし全体の不動産を売るには共有者全員の合意が必要です。
共有状態にある不動産は単独で自由に使えますか?
共有者であれば不動産全体を使用する権利がありますが、単独で制限なく自由に使えるわけではありません。他の共有者との合意や調整が必要な場面もあります。
共有持分の価値はどのように評価されますか?
共有持分の価値は、不動産全体の評価額に持分割合を掛けた額を基準に考えます。ただし、権利の制約や売却の難しさから、実際の市場価値では割引されることが多いです。
共有物分割とは何ですか?
共有物分割とは、共有状態を解消し、各共有者がそれぞれの持分に応じて不動産を分割したり売却して現金化したりする手続きのことを指します。話し合いで合意できない場合は裁判所を通じて進めることもあります。



