コラム

共有持分を「面倒だから」と放置していませんか?揉めずに税金・賠償リスクを解消する方法

「実家を相続したが、兄弟と共有名義になったまま活用できていない」
「誰も住んでいない空き家の固定資産税だけを払い続けている」

こうした状態で止まってしまっていないでしょうか?

共有者が複数いる不動産は、ご自身の一存では自由に管理や売却ができないため、どうすればよいか分からず現状維持を選ばれる方が少なくありません。しかし、専門家の視点からお伝えすると、長期間の放置は法的な権利関係を複雑にし、金銭的な負担を増やす要因となってしまいます

本記事では、共有状態を解消せずに放置した場合にどのようなデメリットが生じるのか、そして共有者との話し合いが難しい状況でも、ご自身の持分のみを売却して負担を解消する方法について解説します。

 

この記事でわかること

  • 共有名義の不動産を放置した場合に生じる主なリスク
  • 空き家のまま所有し続けることで増えていく負担の内容
  • 共有状態が長引くほど解決が難しくなる理由
  • 共有者と話し合えない状況で取れる現実的な対応策
  • 持分のみを売却する場合の基本的な流れと注意点

 

共有持分を放置することで生じる5つの法的・経済的リスク

共有持分を放置することに問題があると示す、両手でバツ印を作る人物のイラスト

「兄弟と意見が合わないから」「連絡を取るのが面倒だから」といって現状維持を選んでしまいがちですが、問題を先送りにして放置し続けると、結果として金銭的な損失や法的なトラブルを招くことになります。

具体的には、主に以下の5つの不利益が生じる可能性があります。

 

  1. 話し合いの遅れによる老朽化と「特定空き家」認定
  2. 管理不足による事故と損害賠償責任
  3. 相続が繰り返されることによる権利関係の複雑化
  4. 共有物件としての資産価値の低下
  5. 裁判や競売による強制的な処分

それぞれの内容について、詳しく解説します。

1. 話し合いの遅れによる老朽化と「特定空き家」認定

建物は時間が経てば傷んでいきますが、共有不動産では、売却や解体など大きな判断に共有者全員の同意が必要です。

そのため「費用を誰が出すか」「直すのか手放すのか」で話が止まり、必要な手入れができないまま時間だけが過ぎることがあります。結果として、雨漏りや腐食などが進み、老朽化が一気に深刻になるケースも珍しくありません。

通常、住宅が建っている土地には、固定資産税の負担が軽くなる特例が適用されています。これは「住宅として使われていること」や、「空き家であっても一定の管理が行われていること」などを前提とした制度です。

しかし、管理が行き届かない状態が続き、特定空き家として認定されると、こうした前提を満たさないと判断されます。その結果、これまで適用されていた特例が外れ、固定資産税の負担が最大で6倍に増える可能性があるのです。

2. 管理不足による事故と損害賠償責任

不動産の所有者は、その建物を安全な状態に保つ責任(工作物責任)を負っています。これは、そこに住んでいるかどうかにかかわらず、名義人であるすべての共有者に課せられる責任です。

もし、老朽化した外壁が崩れて通行人に怪我をさせたり、ブロック塀が倒れて隣の家を壊したりした場合、所有者として損害賠償責任を問われる可能性があります

「自分は住んでいないから」「他の兄弟が管理していると思っていた」という言い訳は通用せず、ある日突然、高額な賠償請求を受ける可能性があるのです。

出典:e-Gov法令検索『民法717条

3. 相続が繰り返されることによる権利関係の複雑化

共有状態を解消せずに放置する最も深刻な問題は、時間が経つにつれて「権利を持つ人」が増えてしまうことです。

共有者の一人が亡くなると、その持分は配偶者や子供などの相続人に引き継がれます。これを繰り返すことで、当初は兄弟だけで共有していたはずが、甥や姪、さらには面識のない遠い親戚までもが共有者として加わることになります。

人数が増えれば増えるほど、全員の意見をまとめることは事実上不可能になります。結果として、不動産を売ることも貸すこともできない「塩漬け状態」に陥ってしまいます。

4. 共有物件としての資産価値の低下

一般的に不動産は古くなると価値が下がりますが、共有名義のまま放置された物件は、さらに市場での評価が低くなります。

これは、買い手から見れば、権利関係が複雑な物件は「購入後にトラブルに巻き込まれるリスクが高い」と判断されることが理由です。

そのため、通常の市場価格よりも大幅に安い金額でしか売れない、あるいは買い手が全くつかないという事態になりがちです。

5. 裁判や競売による強制的な処分

「共有関係を解消したい」と考える共有者が一人でもいれば、その人は他の共有者に対して「共有物分割請求訴訟」を起こす権利を持っています。

通常は話し合いでの解決を目指しますが、「売却価格で折り合いがつかない」「そもそも話し合いに応じてもらえない」といった膠着状態が続くと、最終的な解決手段として裁判所に訴えを起こされてしまうのです。

裁判所での協議でも決着がつかない場合、最終的には裁判所が「不動産を競売(けいばい)にかけて、現金に換えて分けなさい」という命令を下すことになります。競売での売却価格は、通常の市場価格よりも大幅に安くなることが一般的です。その結果、市場価格よりもはるかに安い金額で、大切な不動産を手放さざるを得なくなります

出典:e-Gov法令検索『民法256条

なぜ放置してしまうのか?共有不動産の構造的な課題

共有不動産について、売却や活用の判断に迷い、考え込んでいる人物と共有者の関係を示すイラスト

多くの方が共有不動産の問題解決を先送りにしてしまうのは、個人の問題というよりも、共有不動産という法的な仕組みそのものに難しさがあるからです。

不動産全体の売却には「共有者全員の同意」が必要

民法において、共有物の「変更(処分)行為」には共有者全員の同意が必要と定められています。これには不動産全体の売却、大規模な修繕、建物の解体などが含まれます。

共有者が複数いる場合、そのうちの一人でも反対したり、連絡が取れなかったりすると、不動産全体を動かすことはできません。特に認知症などで判断能力が低下した共有者がいる場合は、成年後見人の選任などが必要となり、手続きはさらに複雑になります。

出典:e-Gov法令検索『民法251条

共有者間の話し合いの難しさ

親族間であっても、不動産やお金が絡む話し合いは心理的な負担が大きいものです。

「誰が固定資産税を負担するか」「売却価格をどうするか」といった意見の相違から、感情的な対立が生じることも少なくありません

また、離婚した元配偶者や疎遠な親族など、関係性によっては連絡を取ること自体がストレスとなり、話し合いを避けてしまうケースもよく見られます。

 

共有者と合意できないときの解決策:持分のみの売却

共有者と合意できない場合の選択肢として、持分のみの売却を示す不動産業者のイラスト

「全員の同意が必要だから何もできない」とお悩みの方も多いですが、実はご自身の判断だけで実行できる解決策があります。それが「自分の共有持分のみを売却する」という方法です。

自分の「持分権」だけの売却は自由にできる

不動産全体を売るには共有者全員の同意が必要ですが、自分の持分そのものは、原則として単独で売却できます

法律上は他の共有者の同意がなくても進められるため、話し合いが難しい状況でも選択肢になり得るのです。

 

専門の買取業者であれば売却が可能

とはいえ、不動産の一部である持分だけを個人が購入するケースはほとんどなく、通常の不動産市場で買い手を見つけるのは難しいのが実情です。

一方、共有持分を専門に扱う買取業者であれば、権利関係が複雑な物件でも、買い取った後に権利関係を整理して活用するノウハウを持っています

共有持分専門の買取業者を利用するメリット

共有持分を専門業者に売却することには、以下のようなメリットがあります。

 

他の共有者と関わらずに済む

売却にあたって、他の共有者への連絡や同意の取り付け、条件調整などを自分で行う必要がなく、業者とのやり取りだけで手続きを進められます

現金化までの段取りが早い

買い手探しが不要なので、条件が合えば査定から契約、決済までを短期間で進められます。いつまでに手放したいかの希望も伝えておくとスムーズです。

契約不適合責任(瑕疵担保責任)の免責

専門業者との買取では、契約不適合責任を免責とする条件で契約できることが多く、売却後の責任トラブルを避けやすい傾向があります。

その他の処分方法との比較

共有持分の解消には、売却以外にもいくつかの方法がありますが、それぞれにハードルがあります。

 

持分放棄

自分の持分を放棄して他の共有者に帰属させる方法です。しかし、法的に成立させるには登記手続きが必要であり、相手方の協力が不可欠です。また、持分を受け取った側に贈与税が発生する可能性があるため、トラブルになることもあります。

土地の分筆

土地を測量して物理的に分ける方法です。完全に独立した土地になりますが、測量費用や時間がかかるうえ、隣地所有者や共有者全員の立ち会い・同意が必要です。

全体売却

全員で協力して不動産全体を売却する方法です。市場価格で売れる可能性が高いですが、前述の通り全員の実印や印鑑証明書が必要であり、一人でも協力が得られない場合は実現できません

このように比較すると、他の共有者との連携が難しい場合には、持分のみを専門業者に買い取ってもらうのが、最も現実的な選択肢と言えます

 

共有持分を買取業者へ売却する際の流れ

共有持分を買取業者へ売却する流れを説明する人物のイラスト

実際に共有持分を売却する際の手順について簡単にご説明します。

 

STEP 1:査定・相談

まずは共有持分を扱う専門業者に相談し、物件の状況や持分割合などを伝えます。秘密厳守で対応してくれる業者が多いため、他の共有者に知られる心配はありません。

STEP 2:査定価格の提示

業者が物件の状況や権利関係を確認し、必要に応じて現地を確認したうえで、買取価格が提示されます。

STEP 3:契約の締結

価格や条件に納得できれば、売買契約を結びます。必要な書類は、権利証(登記識別情報)、実印、印鑑証明書、身分証明書、住民票などです。

STEP 4:決済・登記

代金の受け取りと同時に、持分の移転登記を行います。これで名義変更が完了し、共有関係から抜けることになります。

相談や査定の段階では、費用もかかりませんし、提示された金額を見て「やっぱり売らない」と断ることも自由です。まずはリスクのない段階で、ご自身の持分の価値を確認することから始めてみてはいかがでしょうか。

 

まとめ:共有持分で悩んだら、まずは専門家に相談を

共有持分の問題について、解決に向けた判断を促す担当者のイラスト

 

共有不動産の放置についてのまとめ

  • 共有名義の不動産は、放置することで金銭面や管理責任のリスクが積み重なる
  • 空き家のまま所有し続けると、税金や維持に関する負担だけが残る
  • 共有状態が長期化するほど、権利関係が複雑になり解決が難しくなる
  • 共有者と話し合えない場合でも、持分のみの売却や裁判所を通じた手続きによって、共有関係から離れる方法がある
  • 専門業者による買取は、他の共有者と関わらずに共有関係から離れ、税金や管理に関する問題を手放せる方法である

共有持分の不動産を放置することは、固定資産税の負担や管理責任、権利関係の複雑化など、将来的な不安を抱え続けることにつながります。

ご事情により、他の共有者との話し合いが難しい場合もあるかと思います。そうした場合でも、ご自身の持分だけを整理し、負担をなくす方法は存在します。

「負担をなくすための第一歩」は、すぐに動き出すことではなく、まずご自身の状況で取れる選択肢と、その具体的な進め方を確認することから始まります。

ラクウルでは、共有持分・放置物件・税金や管理負担に関するご相談に特化した窓口を設けております。査定だけのご利用、情報収集だけのご相談も歓迎しております。もちろん、ご相談いただいたからといって売却を急かすことはありません。

他の共有者と話し合えずに長く放置してしまっている、税金や管理の負担をこれ以上抱えたくない、といった個別のご事情がある方も、どうぞお気軽にご相談ください。


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監修者

蔭山達也

蔭山達也

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株式会社ノヴェル代表取締役。宅地建物取引士、不動産コンサルティングマスター、ビル経営管理士、米国不動産経営管理士、賃貸経営管理士。
20年以上不動産ビジネスに携わるなかで、事業用売買仲介・管理を中心としながら、借地・代物弁済・親族間売買・権利調整など複雑な案件の問題解決も行う不動産コンサルタントとして活躍中。著書「条件難物件でも低予算で満室になるおもてなしビル管理経営」を出版。

この記事のまとめQ&A

共有持分を「面倒だから」と放置すると、どんなリスクが積み上がりますか?

共有持分を放置すると、老朽化の進行と特定空き家認定リスク、管理不足による事故と損害賠償責任、相続の繰り返しによる権利関係の複雑化、共有物件としての資産価値の低下、裁判や競売による強制処分といった法的・経済的リスクが積み上がります。問題を先送りにするほど、金銭的損失やトラブルに発展しやすくなります。

共有名義の空き家が「特定空き家」に認定されると、固定資産税はどうなりますか?

管理不全の状態が続き特定空き家として認定されると、住宅がある土地に適用されていた固定資産税の軽減特例が外れる可能性があります。その結果、固定資産税の負担が最大で6倍に増える可能性があるとされています。

空き家の管理不足で事故が起きた場合、共有者でも損害賠償責任を負いますか?

はい。建物の所有者には安全な状態に保つ責任(工作物責任)があり、居住しているかどうかに関係なく名義人である共有者全員が責任を問われる可能性があります。老朽化した外壁の崩落やブロック塀の倒壊などで第三者に損害が出た場合、「住んでいない」「他の共有者が管理していると思っていた」といった事情では免れにくく、高額な賠償請求につながることがあります。

共有状態が長引くほど、解決が難しくなるのはなぜですか?

共有状態のまま時間が経つと、共有者の死亡などで相続が繰り返され、持分が配偶者や子、甥姪、さらに面識のない親族へ分散していきます。共有者の人数が増えるほど全員の意見をまとめることが難しくなり、不動産を売ることも貸すこともできない「塩漬け状態」になりやすいからです。

共有者と合意できない場合でも、自分の共有持分だけを売却して負担を解消できますか?

はい。不動産全体の売却は共有者全員の同意が必要ですが、自分の持分そのものは原則として単独で売却できます。一般の市場では持分だけの買い手を見つけるのは難しい一方、共有持分を専門に扱う買取業者であれば買い取りが可能なケースがあります。売却は、査定・相談→価格提示→契約(権利証、実印、印鑑証明書、身分証、住民票など)→決済・持分移転登記という流れで進み、他の共有者と関わらずに共有関係から離れやすい点が特徴です。

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