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親から相続した実家の共有持分について、「放棄すれば名義から外れられるのでは」と考える方は少なくありません。ところが実際には、登記費用や贈与税の問題が関わってきたり、他の共有者の協力が必要になったりと、思っていた以上に手続きが複雑に感じられるケースもあります。
さらに、共有者同士の関係が悪く、そもそも連絡を取ること自体が負担になっている方であれば、「放棄」という方法が本当に自分に向いているのかどうか、不安や迷いを抱いていることでしょう。
本記事では、共有持分の放棄にかかる費用や登記の仕組みを整理しながら、「できるだけ相手と関わらずに負担を減らしたい」と考えている方に向けて、もう一つの選択肢である買取という方法についても分かりやすくご紹介していきます。
※本記事は、2026年1月時点で確認できる法令・制度・公表資料をもとに作成しています。
この記事でわかること
- 共有持分の放棄にかかる登録免許税と司法書士報酬の目安
- 「早い者勝ち」と言われる理由と、名義を放置するリスク
- 共有持分の放棄に他の共有者の協力が必要になる背景
- 放棄で贈与税が発生する可能性と、親族間トラブルの火種になり得る理由
- 相手と関わらずに共有関係から離れる方法としての「買取」という選択肢
目次
共有持分の放棄にかかる費用と登記の注意点

共有持分の「放棄」という言葉だけ聞くと、書類さえ出せば自分の名義が消えて、税金や管理の負担からも一気に解放されるようなイメージを持ちやすいと思います。
しかし、実務上の手続きを見ていくと、登記にかかる税金や司法書士への報酬など、一定の持ち出し費用が発生するケースが多く、さらに登記をしないまま名義だけ残ってしまうリスクもあります。
ここでは、まず放棄に伴う具体的な費用感と、その前提となる登記の仕組みを整理しておきます。
1.1 登録免許税と司法書士報酬でどれくらい費用がかかるか
共有持分を「放棄する」といっても、実務上は他の共有者に無償で持分が移る形になるため、名義を変えるための所有権移転登記が必要になるのが一般的です。
放棄による所有権移転登記の登録免許税は、不動産の価額(原則、固定資産課税台帳価格)の2%が目安です。評価額1,000万円の持分なら、登録免許税だけで20万円前後になる計算です。
さらに、多くの方は登記手続きを司法書士に依頼することになります。司法書士報酬は数万〜10万円程度が一般的で、登録免許税と合わせると、トータルで数十万円近い負担になる場面もあります。
自分では使う予定のない実家の持分を手放すために、こうした費用を「誰がどこまで負担するのか」が、放棄を考えるうえで最初のハードルになります。
出典:国税庁『登録免許税の税額表』、日本司法書士会連合会『司法書士の報酬と報酬アンケート』
1.2 『早い者勝ち』の本当の意味と、名義を残したまま放置するリスク
共有持分の放棄について調べると「早い者勝ち」という言葉を見かけますが、その実態は「誰が先に登記まで終わらせるか」という話です。共有者同士で「自分の持分は渡した」という合意や口頭でのやり取りがあっても、それだけでは第三者に対して「もう所有者ではない」と主張することはできません。放棄したことを外から証明するためには、登記簿上の名義を変えておく必要があります。
登記が終わるまで名義上の負担が残り得ます。また固定資産税は原則として、その年の1月1日時点の所有者に課税されるため、時期によっては名義を外しても当年分の負担が残る場合があります。
つまり、「早い者勝ち」とは、先に放棄を登記まで済ませて名義を外した人ほど、税金や差押えといった負担から早く抜けられるという意味合いに近いと言えます。裏を返せば、名義を残したまま放置するほど、こうしたリスクを抱え続けることになる、という点は押さえておく必要があります。
共有持分を放棄しても、自分だけでは手続きを完結できない理由

共有持分の放棄は、登記まで完了して名義を外してはじめて、外部からも「所有者ではない」と認められる形になります。ところが、この登記手続きは、自分一人の判断だけで進められるものではありません。
実務では、他の共有者の協力が必要になるため、相手との関係性によっては手続きが思うように進まないことがあります。
2.1 名義を外すには、他の共有者と一緒に登記申請する必要がある
共有持分を放棄する場合、登記の場面では「放棄する人=登記義務者」「取得する共有者=登記権利者」という関係になります。そして、登記申請は双方が揃って行う必要があり、基本的には相手方の実印や印鑑証明書を用意してもらわなければ進みません。
もし相手の共有者が
- 固定資産税の負担が増えることを嫌がる
- 手続き自体を面倒に感じる
といった理由で協力してくれない場合、話し合いによる手続きはそこで止まってしまいます。
その後は、共有状態を整理するために裁判所の手続きを利用する方法を検討することになりますが、どうしても時間や費用、精神的な負担は大きくなりがちです。つまり、「自分だけの判断で名義を外す」という形にはできない点が、共有持分の放棄における大きなハードルと言えるでしょう。
出典:e-Gov法令検索:不動産登記法60条
2.2 共有者に贈与税が発生する可能性とトラブルのきっかけ
共有持分を放棄し、他の共有者の持分が増える場合、税務上は「贈与」とみなされる可能性があります。この時、持分が増えた側に贈与税が課されるケースがある点には注意が必要です。
評価額500万円の持分を譲渡した場合(一般贈与)
- 課税価格
500万円 − 110万円(基礎控除)= 390万円 - 税額
390万円 × 20% − 25万円 = 53万円
評価額1,000万円の持分を譲渡した場合(一般贈与)
- 課税価格
1,000万円 − 110万円(基礎控除)= 890万円 - 税額
890万円 × 40% − 125万円 = 231万円
このように、持分の評価額によっては、贈与税の金額が200万円を超えることもあり得ます。もし共有者本人がその点を理解していなかった場合、「知らないうちに贈与税の対象にされた」と受け止められてしまうこともあり、放棄をきっかけに関係がこじれる危険性も否定できません。
そのため、共有持分の放棄は、税金面についても事前に説明し、相手の了承を得たうえで進めることが安心です。
相手と関わらずに持分を手放す方法は「売却」

共有持分を手放す方法として「放棄」を検討する方は多いのですが、実務では相手の協力が欠かせず、思うように進まない場合があります。そこで選択肢となるのが、「自分の共有持分だけを第三者へ売却する」方法です。
売却であれば、他の共有者と直接やり取りをせずに、共有関係から抜けられます。
3.1 自分の共有持分だけなら他の共有者の同意なく売却できる
共有不動産の「全部」を売却するには、共有者全員の同意が必要です。一方、「自分の共有持分だけ」を売却する場合は扱いが異なり、法律上、他の共有者の同意や事前連絡は必須ではありません(民法206条)。
つまり
- 放棄 = 他の共有者と共同で進める手続き
- 売却 = 自分の判断だけで行える手続き
という違いがあります。
親族関係がこじれている場合でも、お願いして協力を求める必要はありません。
3.2 共有持分専門の買取業者に売却した場合の費用と仕組み
共有持分は、一般の仲介では買い手が付きにくいのが実情です。購入しても「家として自由に使えない」「勝手に処分できない」といった制約が多く、実需目的の人には手が出しにくい物件だからです。
一方で、共有持分の取引を専門にしている買取業者は、購入後に他の共有者と交渉し、最終的に不動産を売却したり、活用できる状態に整えたりするノウハウを持っています。時間と手間をかけて権利関係を整理し、その過程で生まれる利益を収益源としているため、共有状態のままでも買い取りに応じられる仕組みになっています。
こうした共有持分の専門業者へ売却する場合には、所有権移転登記にかかる登録免許税や司法書士報酬などの費用を、売主ではなく業者側が負担するケースも多く見られます。
つまり、売主自身が登記費用の持ち出しを押さえられることも多く、持分の評価額に応じて売却代金を受け取れるということです。
共有持分買取サービスを使って共有関係から離れる手順

共有持分を売却して共有関係から離れるには、買取業者の選び方と手続きの流れをあらかじめイメージしておくと安心です。特に「自分からは一切連絡を取りたくない」という場合は、売却後のやり取りまでどこまで任せられるかを事前に確認しておくことが大切です。
ここでは、業者を選ぶ際に見ておきたいポイントと、相談から名義変更が終わるまでのおおまかな流れを整理しておきます。
4.1 業者選びの基準:売却後のやり取りまで任せられるか
共有持分の買取サービスを利用する大きな目的のひとつは、「自分が前面に立たずに共有関係から離れる」という点にあります。実際、買取業者が新しい共有者となり、その後の権利調整や共有者とのやり取りを引き継ぐ形になるため、売却後の対応は基本的に業者側の役割となります。
ただし、「どこまで任せられるか」は会社によって違いがあります。特に以下の3点は、事前に確認しておきたいポイントです。
- 他の共有者への連絡や説明を業者が主体的に対応してくれるか
- 問い合わせや苦情の窓口を業者側に一本化できるか
- トラブルが想定される場合、弁護士との連携体制があるか
共有持分の売却は、手続きとしては法律に沿って進めていくものですが、その一方で、親族同士の気持ちに影響が出やすい部分もあります。
「売却したら終わり」ではなく、売却後のフォロー体制まで含めて任せられる会社かどうかを、判断材料のひとつとして考えると安心です。
4.2 相談から現金化・登記完了までの具体的な流れ
共有持分の買取を依頼する場合、おおまかな流れは次のようになります。
まずは共有持分の買取を行っている業者に連絡し、現在の状況を伝えます。電話やメールのほか、最近はLINEで相談を受け付けている会社もあります。
最初の段階では、「共有持分を売却したい」「相続した実家の持分だけ手放したい」といった概要を伝えるだけで十分です。
次に、物件の状態や立地、権利関係を確認するための調査が行われます。立ち合いが不要な業者もあり、遠方に住んでいる場合でも対応してもらえるケースが多いです。
調査結果を踏まえて、業者から買取価格の提示があります。
提示された条件に納得できれば、買取業者とのあいだで売買契約を結びます。契約書への署名・押印は、共有持分の所有者本人が行えば大丈夫です。
この段階で、決済日や入金日、登記の予定日なども確認しておきます。
決済日には、約束した代金の支払いと同時に、共有持分の名義を業者に移す登記手続きが行われます。通常は司法書士が立ち会い、本人確認や書類のチェック、登記申請までまとめて対応します。
名義の移転登記が完了した時点で、共有持分の売却は正式に完了し、共有者としての立場から外れることになります。
この流れを押さえておくと、「何を聞かれるのか」「どこで自分が動くのか」がイメージしやすくなり、不安も少し和らぐはずです。
まとめ:費用と手間を踏まえると『放棄』より『買取』がおすすめ

共有持分放棄の費用についてのまとめ
- 共有持分を放棄するには、他の共有者への所有権移転登記に伴う登録免許税や司法書士報酬の負担が生じる
- 「早い者勝ち」と言われるのは、誰が先に登記まで済ませるかが、固定資産税の負担や差押えの場面に影響するため
- 所有権移転には他の共有者と共同で登記申請する必要があり、協力が得られないと手続きが進まない
- 無償で持分を渡すと、取得側に贈与税が発生する可能性がある
- 相手と直接やり取りをせずに共有状態から離れたい場合、共有持分の買取は有力な選択肢となる
共有持分の「放棄」は、簡単に共有状態から抜けられる方法のように見えますが、実際には登記費用の負担や贈与税の問題、さらに他の共有者の協力が必要になる場合もあり、思い通りに進まないことも少なくありません。
その点「専門業者による買取」であれば、自分の判断で手続きを進められ、費用負担を抑えながら共有持分を手放せます。親族との交渉に不安がある方や、先の見えない状況から早く抜け出したい方にとって、検討してみる価値のある方法です。
「自分の判断で進める一歩」は、すぐに動くことではなく、まず買取の具体的な条件や金額を把握することから始まります。
ラクウルでは、共有持分の放棄に代わる買取・親族間トラブル・費用負担に関するご相談に特化した窓口を設けております。査定だけのご利用、情報収集だけのご相談も歓迎しております。もちろん、ご相談いただいたからといって売却を急かすことはありません。
親族との交渉に踏み出せない、放棄に伴う費用やリスクを避けたい、といった個別のご事情がある方も、どうぞお気軽にご相談ください。
この記事のまとめQ&A
共有持分を放棄することはできますか?
はい。共有持分は放棄すること自体は可能ですが、単純に『もういらないから何もしない』という形では完結せず、登記手続きが必要になります。また他の共有者の協力が求められ、関係がこじれている場合には進まないケースもあります。
共有持分の放棄にはどんなリスクがありますか?
共有持分の放棄は、他の共有者との関係が悪化していると手続き自体が進まない可能性があります。また、無償で持分権を渡すことになり『贈与』とみなされると贈与税が発生するリスクもあります。さらに、共有物分割請求のような法的措置に比べても手続きが複雑になり得ます。
共有持分を放棄手続きをすると費用はかかりますか?
はい。放棄を完了するためには登記手続きなどの費用がかかります。司法書士への報酬や登録免許税などの実費が伴うため、完全に費用負担が不要というわけではありません。
共有持分を放棄すると税金はどうなりますか?
共有持分を無償で放棄すると、権利を渡す行為が『贈与』とみなされる可能性があり、贈与税が発生するリスクがあります。また、共有持分の評価額によって課税額も変わりますので慎重な判断が必要です。
共有持分の放棄と売却は何が違いますか?
放棄は権利を無償で手放す行為であるのに対し、売却は対価(お金)を受け取って持分を譲渡する行為です。売却は譲渡所得税の対象になりますが、放棄は贈与税など別の税金が関わる可能性があります。また、放棄には他の共有者の協力が必要なケースが多く、進まないこともあります。
共有持分を放棄すると、すぐに共有関係が解消されますか?
放棄が完了しても、他の共有者との調整が必要になる場合があります。また、放棄を登記で完結させるためには他の共有者の協力が必要となることがあり、単独で即解消できるとは限りません。
共有物分割請求と放棄はどちらが安全ですか?
共有物分割請求は裁判所を通じて共有関係を整理する方法で、法的に確実性が高い一方、放棄は共有者間の協力が前提となります。関係がこじれている場合には、共有物分割請求の方が進みやすく、安全性が高いと考えられます。
共有持分を放棄する際の流れはどうなりますか?
共有持分の放棄を進める際は、まず放棄の意思を他の共有者に通知し、必要書類を準備して登記申請を行います。司法書士など専門家に依頼することが一般的で、協力が得られない場合には手続きが滞る可能性があります。



