コラム

共有名義の贈与税を回避するには?共有持分と出資割合から考える対処法

不動産を共有名義で購入した際、持分と出資の割合が一致していないと贈与税が発生する、ということをご存じでしょうか。例えば、夫の単独名義で住宅ローンを組み、夫婦で持分を半分ずつにした場合、妻の方に贈与税が課される可能性があります。

しかし一方で、共有名義の持分が出資比率と一致していなくても、更正登記や離婚時の財産分与といった手段で、贈与税をかけずに修正する方法もあります。

本記事では、持分と出資比率の不一致で贈与税がかかる仕組みから、一致しているかを自分で確認する方法、贈与税ゼロで持分を修正する手段、税務署からお尋ねが届いたときの対応までを順に解説します。読み終える頃には、ご自身の登記がどの状態にあり、次に何をすればよいかを判断できるようになっているはずです。

この記事でわかること

  • 持分割合と出資率の不一致で贈与税がかかる仕組み
  • 夫単独ローンで妻に贈与税がかかる理由
  • 自分の持分と出資割合が一致しているかの確認方法
  • 一致していない状態を放置した場合の課税リスク
  • 贈与税のかからない持分移転方法

出資割合との不一致で贈与税がかかる仕組み

共有名義で購入した家の持分割合が分からず悩む夫婦

そもそもなぜ、自分たちのお金で買った家なのに、持分の設定次第で贈与税がかかるのでしょうか。まずは課税の仕組みと、税金が出るかどうかの境界を見てみましょう。

1-1. 持分が出資割合と一致しないと贈与税がかかる

共有で不動産を購入する際、登記の持分割合は「誰がいくら出したか」という出資割合に合わせるのが原則です。一方で、出資割合と異なる比率で持分を登記した場合、多い持分を登記された側は、差額分の財産を無償で受け取ったとみなされ、贈与税の対象になります。

出資として数えられるのは、住宅ローン・自己資金・親からの援助の3つです。住宅ローンは債務者本人の出資として扱われるため、誰が債務者になっているかが持分を左右します。

ただし、贈与税には年110万円の基礎控除があり、範囲内であれば課税されません。なお、贈与税の対象となる差額を計算する際の不動産の評価額は、実際の売買価格ではなく相続税評価額を使います。土地は路線価をもとにした金額、建物は固定資産税評価額です。

1-2. 夫だけのローンで半々登記は妻への贈与

住宅ローンは債務者本人の出資として扱われるため、夫の単独ローンで妻の自己資金がゼロなら、実質の出資は夫が100%です。出資がすべて夫なのに持分を半々で登記すると、妻の持分の全額が夫から妻への贈与とみなされる可能性が高くなります。

一方、妻が頭金や諸費用を負担していれば、その分は妻の出資として持分に反映でき、贈与にはなりません。

なお単独ローンの場合、贈与税が課されるのは購入時の一度だけですが、連帯債務の場合は毎年贈与税が課される可能性があります。詳しくは3章で解説します。

出資比率と登記持分が一致しているか確認する方法

登記事項証明書を手に持分割合を確認する男性

ご自身の状況を把握するには、登記されている持分と「自己負担額 ÷ 購入代金」を比べる方法があります。

登記上の持分は、法務局で取得できる登記事項証明書(登記簿謄本)の権利部(甲区)に「持分◯分の◯」という形で記載されています。

たとえば4,000万円の物件で、夫が3,600万円、妻が400万円を負担した場合、適正な持分は夫10分の9、妻10分の1です。出資額の割合を出してから登記を確認した際、出資額とは異なる比率で登記していれば、妻の持分のうち出資を超える部分が贈与とみなされる可能性があります。

なお、法務局で謄本を取得する際には490~600円(取得方法により変動)の手数料が必要ですが、提出用の書類は不要で内容を確認したいだけであれば、登記情報提供サービスで登記情報のPDFを閲覧する方法もあります。手数料は1件330円で、証明書としての効力はないものの、書類を取得するより安く済みます。

出典:法務局『登記手数料について

持分の不一致を放置した場合のリスク

持分の不一致を放置してはいけないと示す男性

持分と出資比率がずれていると分かっても、今まで税務署から連絡が来ていないなら大丈夫ではないかと考えたくなるかもしれません。しかし、正しい持分に修正せず放置していると、2つのリスクが表面化します。

3-1. 無申告加算税・延滞税が課される

持分の不一致を正しく処理しないまま無申告でいると、発覚した際に、本来納めるべき贈与税に加えて無申告加算税延滞税というペナルティが課されます。仮装や隠蔽を伴う悪質なケースと判断されれば、無申告加算税に代えて重加算税(本来の税額の40%加算)が課されることもあります。

税務署は、法務局から登記異動の情報を受け取り、KSK(国税総合管理)システムで個人の所得や資産と突き合わせて申告状況を把握しています。登記をした事実自体は、すでに税務署へ伝わっている前提で考えるのが安全です。

3-2. ローンを片方が払い続けると毎年贈与になる

夫婦の連帯債務でローンを組み、持分を共有登記しているのに、実際の返済を片方だけが続けている場合、返済のたびに毎年、贈与とみなされるおそれがあります。返済していない側が本来負担すべき分を、もう一方が肩代わりしていることになるためです。単独ローンによる贈与が購入時の一度きりであるのに対し、連帯債務で返済が偏っている状態は、返済が続く限り毎年、贈与とみなされる可能性があります。

一方、共働きの夫婦が同じ家計から共同で返済している場合は、それぞれの所得割合で負担したものとして扱われます。所得割合と登記の持分にズレがあっても、その分が年110万円の基礎控除内であれば贈与税はかかりません。

贈与税ゼロで持分の不一致を解消する手段

贈与税をかけずに持分を移す方法を示す女性

持分が出資割合とズレていても、贈与税をかけずに正しい持分へ直す方法があります。当初の登記の誤りを訂正する更正登記、基礎控除を使って少しずつ移す暦年贈与、夫婦間の非課税枠を使う配偶者控除の3つです。

4-1. 更正登記を申告する

当初の登記に錯誤(勘違いや記入ミス)があったものとして「所有権更正登記」を申請し、正しい持分に遡って訂正する方法です。新たな贈与や売買ではなく、最初から誤っていたことを前提に直す手続きのため、正しく行えば贈与税は発生しません。

更正登記のためには、贈与とみなされた年の翌年3月15日、つまり贈与税の申告期限までに更正登記を済ませる必要があります。過誤や軽率によって財産を他人名義で登記した場合でも、贈与税の申告期限より前に本人名義へ直せば、贈与がなかったものとして扱われます。

手続きで重要なのは、登記原因を「錯誤」とすることです。錯誤以外の原因で持分を動かすと、別の贈与とみなされ、かえって贈与税がかかるおそれがあります。

また、更正登記が認められるのは、更正の前後で登記名義人に同一性がある場合に限られるという解釈もあります。まったく別の名義人に変える、共有名義から単独名義に変えるといった更正は、認められないこともあります。

費用は、登録免許税が不動産1個につき1,000円と安く済みますが、司法書士に依頼する場合の報酬は別途かかります。

4-2. 暦年贈与で少しずつ持分を移す

更正登記が使えない場合でも、暦年贈与の基礎控除内で持分を動かす方法もあります。一度に移すと110万円を超える場合も、小分けにして複数年に分ければ、各年の基礎控除の枠内で無税にできます。

ただし、動かしたい持分の評価額が大きいほど完了までの年数がかかります。評価額が数百万円あれば十年以上を要することもあり、持分のズレが大きいケースでは手段として現実的でない場合があります。

4-3. 夫婦間の非課税枠で持分を移す

婚姻期間が20年以上の夫婦であれば、「贈与税の配偶者控除(おしどり贈与)」が利用できます。

おしどり贈与は、居住用不動産の持分を、基礎控除110万円と配偶者控除2,000万円の合計2,110万円まで贈与税なしで移せる特例です。適用できるのは同じ配偶者の間で一生に一度だけで、内縁関係では利用できません。

ただし、おしどり贈与で贈与税がゼロになっても、登記のための登録免許税や不動産取得税は別に発生する点には注意しましょう。

4-3-1. 離婚を伴う場合は財産分与

離婚に伴う財産分与で不動産の持分を受け取る側には、原則として贈与税がかかりません。相手から贈与を受けたのではなく、夫婦で築いた財産を分け合い、離婚後の生活を保障するために受け取ったものと扱われるためです。

ただし、例外が2つあります。1つ目は、婚姻中に夫婦で築いた財産の額などを考慮しても、分与された額が多過ぎる場合で、超過分に対して贈与税が課されます。2つ目は、贈与税や相続税を免れる目的の偽装離婚と認められた場合で、受け取った財産の全額が贈与税の課税対象です。

財産分与で持分を移す場合は、離婚前に協議を行い、離婚成立後に所有権移転登記を申請するという流れになります。離婚成立前に持分を移すと、贈与とみなされ贈与税の対象になってしまうため注意しましょう。

出典:国税庁『相続税基本通達9-8

 

4-3-2. 親と共有名義の場合は相続時精算課税

夫婦間ではなく親子で共有名義にしている場合は、相続時精算課税制度を利用できる可能性があります。暦年贈与では毎年110万円を超えた分に贈与税がかかるため、評価額の大きい持分を移すには何年もかけて少しずつ贈与する必要があります。一方、相続時精算課税制度を選ぶと、同じ贈与者からの贈与について累計2,500万円まで非課税になり、超えた分にのみ一律20%の贈与税がかかります。持分を一度にまとめて移しても、2,500万円の枠内であればその時点では課税されません。

適用できるのは、贈与した年の1月1日時点で、贈与者が60歳以上、受贈者が18歳以上の直系卑属(子・孫)である推定相続人または孫の場合です。夫婦間では使えず、親子や祖父母と孫の間で持分を動かすための制度といえます。

ただし、一度相続時精算課税制度を選択すると、同じ贈与者からの贈与を暦年課税に戻せなくなる点には注意が必要です。

税務署からお尋ねが来たときの対応

お尋ねに備えて必要な書類を確認するイメージ

持分と出資割合が一致していない場合、税務署から「お尋ね」が届くことがあります。お尋ねとは、贈与税の申告漏れが疑われるときに税務署が送付する確認の文書です。

お尋ねが届いた場合は、登記や申告の内容を書面で説明する必要があります。持分を直した経緯は、更正登記であれば「錯誤」、贈与であれば「贈与」と、登記簿に登記原因として記録されています。あわせて、出資額のわかる資料や売買契約書、贈与として申告した場合はその控えを用意しておくとよいでしょう。

まとめ:共有名義の贈与税は早めの対応で回避できる

 

共有名義の贈与税について専門家に相談する様子

 

この記事のまとめ

  • 登記の持分は出資割合に合わせるのが原則で、多い側は差額分が贈与とみなされる
  • 贈与税には年110万円の基礎控除があり、不動産の評価額は相続税評価額で計算する
  • 不一致を放置すると、無申告加算税や延滞税が上乗せされるおそれがある
  • 申告期限内なら更正登記、期限後も暦年贈与・配偶者控除・相続時精算課税などで移せる
  • 離婚時は財産分与として持分を移せば、原則として贈与税はかからない

共有名義の持分が出資割合と一致していなくても、気づいた時点で動けば、贈与税の負担なく持分を出資割合に合わせたり、無理のない形で移したりできる余地は十分にあります。反対に、心当たりがあるまま何もしないでいると、加算税を伴う課税につながることもあります。まずは登記事項証明書でご自身の持分を確認し、購入時の出資額と照らし合わせて、現状を把握するところから始めましょう。

なお、持分を出資割合に合わせるのではなく、売却などで共有関係そのものから抜ける場合の税金については、こちらの記事もあわせてご活用ください。

 


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監修者

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ラクウルスタッフ

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この記事のまとめQ&A

共有名義の持分と出資割合が違うと必ず贈与税がかかりますか?

持分割合が実際の出資割合と異なる場合、出資を超えて取得した持分は贈与とみなされ、贈与税が課される可能性があります。ただし、基礎控除や適用できる制度によって課税されないケースもあります。

夫の単独ローンで家を購入し、夫婦で半分ずつの共有名義にするとどうなりますか?

妻が自己資金を負担していないにもかかわらず持分を取得した場合、その持分は夫から妻への贈与とみなされ、贈与税の対象となる可能性があります。

持分と出資割合の不一致はどのように確認できますか?

法務局で取得できる登記事項証明書で持分割合を確認し、購入時の自己資金や住宅ローンなどの出資割合と比較することで、不一致があるか確認できます。

持分の不一致を贈与税なしで修正する方法はありますか?

状況によっては、更正登記や暦年贈与、夫婦間の配偶者控除、離婚時の財産分与、相続時精算課税制度などを利用することで、贈与税を抑えながら持分を修正できる場合があります。

税務署からお尋ねが届いたらどう対応すればよいですか?

持分を変更した経緯や出資割合が分かる資料、売買契約書、登記事項証明書などを準備し、事実に基づいて説明することが大切です。内容によっては税理士や司法書士へ相談することも検討しましょう。

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