
目次
共有持分を専門業者に売却する際、最も不安なのは、売却後にトラブルが発生しないかという点ではないでしょうか。
実際に持分を買い取ってもらったことで、知らないうちに訴訟に発展したり、親族との関係がさらに悪化したり、あるいは契約後になって追加費用を請求されるといったトラブルは現実に起こり得ます。今の複雑な関係を解消しようと動いた結果、別の問題に振り回されるのは避けなければなりません。
本記事では、共有持分の買取にまつわる代表的なトラブル事例と、その回避方法を解説します。事前に起こり得るリスクを把握し、後悔のない判断を下す第一歩にしてください。
※本記事は、2026年1月時点で確認できる法令・制度・公表資料をもとに作成しています。
この記事でわかること
- 訴訟や競売に発展する共有物分割請求の仕組み
- 入居者との明け渡しトラブルの可能性
- 他の共有者との関係悪化・責任追及リスク
- 買取業者との契約で起こる費用請求や買い叩きのリスク
- トラブルを防ぐための信頼できる業者の見極め方
目次
買取業者とほかの共有者の間で起きやすいトラブル

共有持分を業者に売却した後、問題が起こるのは売主自身だけとは限りません。新たに共有者となった業者と、元々の他の共有者との間でトラブルが生じるケースもあります。
ここでは、実際に起こりやすい事例を見ながら、何が原因で対立に発展するのかを解説します。
1.1 共有物分割請求で訴訟や競売に発展するケース
共有持分を取得した業者は、共有状態を解消するため「共有物分割請求」を行うことがあります(民法256条)。
共有物分割請求は、法的に認められた正当な手続きで、当事者間の協議でまとまらない場合などに、地方裁判所の手続を通じて、最終的には裁判所が「どう分けるか」を判断します。
ここで最も警戒すべきなのが、裁判所によって「換価分割(かんかぶんかつ)」が選択されるケースです。換価分割とは「不動産を売ってお金で分ける」方法で、裁判所の手続きにおいては、原則として「競売(けいばい)」による強制的な売却が命じられます。
競売での売却価格は、通常の相場よりも大幅に安くなる傾向があります。さらに、共有持分を持っていた業者が自ら競売に参加し、相場より安い価格で不動産全体を落札してしまうことも珍しくありません。
その結果、他の共有者は「本来の価値より安い現金だけを渡されて、実家を失う」という想定外の不利益を被ることになるのです。
持分を売ること自体は法律で認められた正当な権利ですが、売却後には、他の共有者も「不動産をどうするのか」の決断をどうしても迫られることになります。この状況の変化が、相手に「勝手に話を進められた」という不信感を与え、感情的な対立を招く大きな原因となってしまうのです。
1.2 入居者の追い出し(明け渡し)トラブル
「業者に売ったら、家に住んでいる家族が追い出される」という話を聞いたことがあるかもしれません。
結論から言えば、「すぐに追い出される」ようなことは、原則としてありません。
共有不動産では、たとえ一人の共有者が独占的に住んでいても、他の共有者(=買い取った業者)には、簡単に立ち退かせる権利はないのです。
これは法律上、”各共有者が物件全体を使用する権利を持っている(民法249条)”ためで、業者が新たに共有者になったからといって、すぐに明け渡しを迫ることはできません。
とはいえ、状況がこじれることはあります。
居住者が家を手放すつもりがない場合、業者側が「自分の持分を使えていない」として、居住者に使用料(持分に見合った家賃)を請求することもあります(民法249条)。たとえば親族が住み続けている家に、業者から「あなたの住んでいる分の賃料を払ってください」と連絡が来れば、当然トラブルになります。このやり取りが泥沼化すると、金銭交渉や訴訟に発展する可能性も。
ネット上で見る「業者が家族を追い出した」という噂の多くは、こうした背景の末に話がこじれた結果です。強制的な立ち退きではなく、法的手続きや和解交渉の結果なのです。
住んでいる側にとっては、生活の場を脅かされる深刻な事態。たとえ法的に正当でも、感情的な対立が起きやすいため、事前に構造は理解しておく必要があります。
他の共有者との間で起きやすいトラブル

共有持分の売却は単独でできるとはいえ、その判断が他の共有者との関係に影響することもあります。特に、親族間で不動産を共有している場合などは、売却後に思わぬ対立が生じるケースも。
以下では、売却をきっかけに起こりやすい対人トラブルと、その背景にある原因を紹介します。
2.1 「勝手に売った」と関係がこじれるケース
共有持分は、他の共有者の承諾がなくても単独で売却できると民法で定められています(民法206条)。しかし、事前に何の連絡もなく第三者に持分を譲渡したことで、共有者間の関係がこじれるケースはあります。
親族間の合意なしに第三者が共有関係に加わることは、残された共有者にとって「見知らぬ業者との共同所有」という予期せぬ事態を意味します。特に、買主が不動産買取業者だった場合、この事後報告による心理的な不信感が、それまでの親族関係を決定的に損なう引き金となることも少なくないのです。
こうしたトラブルは、売却を事前に知らせなかったことや、相手が想定していなかった第三者との共有関係が突然始まったことなど、売却時の伝え方やタイミングが原因になる傾向があります。
2.2 「損害が出た」と責任を追及されるケース
共有持分を業者に売却したことで、残された共有者から「損害を被った」と責められるケースもあります。
たとえば、業者が共有物分割請求を起こし、訴訟や競売に発展すると、他の共有者はその対応に追われることになります。さらに、望まぬ形で不動産を手放す結果になれば、「あなたが業者に売ったせいでこうなった」と非難されることもあるのです。
法的に売却自体は自由でも、結果として他の共有者に不利益が生じれば、対立の火種になる可能性は否定できません。
買取業者との間で起きるトラブル

共有持分の買取では、業者との取引に事態に起因するトラブルも少なくありません。特に注意したいのが「買い叩き」と「契約後の条件変更・費用請求」です。
想定より大幅に安い金額で売ってしまったり、後から思わぬコストが発生してしまったりすることで、結果的に納得のいかない取引になってしまうケースがあります。
3.1 相場以下で買い叩かれるケース
共有持分は、単独では利用価値が乏しく買い手が限られるため、流通価格が不透明になりがちです。こうした背景を逆手に取り、相場を知らない売主に対して極端に低い価格を提示してくる業者もいます。
たとえば、周辺相場をよく調べることなく、提示された査定額を鵜呑みにして売却した結果、のちに他の共有者から「それは安すぎる」と指摘されて後悔するケースもあります。特に親族間で「持分の価値はもっと高いはず」という人がいた場合、トラブルの引き金になりかねません。
相場がつかみにくい不動産だからこそ、「なぜこの金額になるのか」といった査定の根拠を細かく説明してくれる業者を選ぶことが大切です。
3.2 契約後に条件変更や費用請求をされるケース
査定時には好条件を提示していたにもかかわらず、契約段階や締結後になってから、追加費用を請求される事例も報告されています。
「測量費用が想定より高くついた」「残置物の撤去が必要」「シロアリの被害があった」などの理由で、当初の提示額から大きく手取りが下がってしまうパターンです。査定時点ではこうした費用の説明がなく、後から初めて聞かされて戸惑ったという声も聞かれます。
このようなリスクを避けるには、追加費用が発生する場合の条件や、売主が負担すべき費用の範囲、解約解除のルールなどを事前に確認し、契約書に明記されているかを確認しておく必要があります。
トラブルを避けるための買取業者の選び方

ここまで見てきたように、共有持分を買取業者に売却したことで、他の共有者との間で訴訟や対立が起きたり、契約面で損をしてしまう事例は少なくありません。
とはいえ、すべての業者が強引でトラブルを引き起こすわけではなく、法的手続きや人間関係への配慮をもって対応してくれる業者も存在します。
トラブルを避けるために押さえておきたい、業者選びのチェックポイントを見ていきましょう。
4.1 共有持分の取引実績が豊富か
共有持分は、通常の不動産と比べて扱いが特殊なため、一般的な売買とは異なる知識や対応力が求められます。経験の少ない業者では、他の共有者との交渉や法的な手続きに戸惑い、思わぬトラブルにつながるリスクがあります。
過去の実績が豊富な業者であれば、これまでに同様の問題を多数取り扱ってきた分、先回りして対応できる場面も多く、安心感があります。実績例や取扱件数をホームページで公表しているかも、ひとつの判断材料になるでしょう。
4.2 弁護士と連携してトラブルに対応できるか
共有持分の売却は、他の共有者との関係性や法的リスクが絡むため、万が一のトラブルにも対応できる体制が必要です。業者側に法務の専門家がサポート体制として加わっていない場合、いざというときの対応が遅れ、問題が長引く可能性もあります。
弁護士と提携し、必要に応じて契約書の確認や交渉、訴訟対応までサポートしてもらえる体制が整っている業者であれば、問題が起きた際にもスムーズに進められます。契約前後に、弁護士が契約内容の確認やトラブル時の助言など、どのような役割を担ってくれるのかをあらかじめ確認しておくことが重要です。
4.3 説明が丁寧で誠実な姿勢か
業者とのやり取りの中で、「説明が分かりやすいか」「都合の悪いことも隠さず伝えてくれるか」といった対応の姿勢も、業者の信頼性を測るポイントです。
契約条件のリスクや追加費用の可能性をあらかじめ説明してくれる業者であれば、あとからのトラブルを防ぎやすくなります。逆に、「今すぐ売らないと損です」といった不安をあおる言動が多い場合は、注意が必要です。
問い合わせへの返答スピードや、資料の提示方法、態度の一貫性などから、信頼できる担当者かどうかを見極めましょう。
まとめ:不安やトラブルを避けるには、まず正しい価格を知るところから

共有持分売却のトラブルについてのまとめ
- 共有持分売却後に、買取業者と他の共有者が訴訟に発展することがある
- 共有者がいる場合、使用料請求や明け渡し交渉でもめるケースがある
- 親族間で「勝手に売った」と関係が悪化するリスクもある
- 業者による買い叩きや契約条件の変更にも注意が必要
- トラブル回避には、信頼と実績のある業者を選ぶことが重要
共有持分の売却は、法律上の権利行使ではあるものの、その後の関係性や実務において相応のリスクを伴うのが現実です。
共有者との関係悪化や、買取業者による共有物分割請求・賃料請求、買い叩きや追加費用の請求など、予期せぬトラブルとして表面化することもあります。
しかし、共有持分を売却したのちに起こり得るトラブルをあらかじめ把握しておくことは、決して売却をあきらめるための材料ではありません。むしろ、起こり得るトラブルの構造を理解したうえで、安心して売却手続きを完了できるようサポートしてくれる業者を選ぶきっかけになります。
売却後のトラブルを避けるための一歩は、契約を急ぐことではなく、まず信頼できる業者に状況を話し、対応方針を確かめてみることから始まります。
ラクウルでは、共有持分・親族間トラブル・売却後のリスクに関するご相談に特化した窓口を設けております。査定だけのご利用、情報収集だけのご相談も歓迎しております。もちろん、ご相談いただいたからといって売却を急かすことはありません。
他社の対応に不安を感じている、売却後の請求や訴訟リスクを避けたい、といった個別のご事情がある方も、どうぞお気軽にご相談ください。
この記事のまとめQ&A
共有持分を業者に売ると、訴訟や競売に発展することはありますか?
あります。業者が共有状態を解消するために共有物分割請求を行い、調停→訴訟へ進んだり、換価分割(売却して現金で分ける)で競売に至るケースがあります。競売になると市場価格より評価が下がるなど、他の共有者に想定外の不利益が出て対立につながることがあります。
共有持分を業者に売ったら、住んでいる家族はすぐ追い出されますか?
原則として「すぐに追い出される」ことはありません。共有不動産では各共有者に物件全体を使用する権利があるため、業者が新たな共有者になっても直ちに明け渡しを迫ることはできません。ただし、業者側が使用料(持分に応じた賃料)を請求するなど、交渉がこじれてトラブル化する可能性はあります。
他の共有者の同意がなくても、共有持分は売れますか?
共有持分の売却自体は、他の共有者の承諾がなくても単独でできるとされています。ただし、事前連絡なく第三者(業者)が共有関係に入ることで、不信感から関係がこじれる原因になり得ます。
共有持分を売ったことで、他の共有者から「損害が出た」と責められることはありますか?
あり得ます。業者が共有物分割請求を起こして訴訟・競売に発展した場合、他の共有者は対応を迫られ、望まない形で不動産を手放す結果になることもあります。売却自体は法的に自由でも、結果として不利益が生じると対立の火種になり得ます。
共有持分を買取業者に安く買い叩かれるリスクはありますか?
あります。共有持分は流通価格が不透明になりがちで、相場を知らない売主に極端に低い価格を提示する業者もいるとされています。周辺相場や査定根拠を丁寧に説明してくれる業者を選ぶことが重要です。
共有持分の売却契約後に条件変更や追加費用を請求されることはありますか?対策は?
報告されています。査定時は好条件でも、契約段階や締結後に「測量費用」「残置物撤去」「シロアリ被害」等を理由に追加費用が発生し、手取りが下がるケースがあります。追加費用が発生する条件、売主負担範囲、解除ルール等を事前に確認し、契約書に明記されているか確認することが大切です。
共有持分の売却トラブルを避けるために、業者選びで見るべきポイントは?
取引実績があることに加え、法的リスクに備えて弁護士と連携できる体制があるか、契約条件のリスクや追加費用の可能性を事前に丁寧に説明するなど誠実な姿勢かがポイントです。不安をあおる言動が多い場合は注意が必要です。



