コラム

共有名義の建物は勝手に取り壊しNG|話が進まないときの選択肢と共有状態の解消方法

相続で共有名義になった古い実家を片付けたいのに、共有者の1人が反対して話が進まないケースは珍しくありません。自分はもう住まない、放置も不安、でも勝手に壊してよいのか判断がつかない。そのまま時間だけが過ぎると、固定資産税や管理の負担だけが積み重なっていきます。結論からお伝えすると、共有名義の建物は、原則として共有者全員の同意がなければ取り壊しはできません。反対している人がいる状態で無理に進めると、後からトラブルが大きくなるおそれもあるため注意が必要です。

本記事では、まず1人ではどこまで進められるかを確認したうえで、解体できない場合に持分売却や共有状態の解消へ切り替える考え方まで、順番に解説します。

 

この記事でわかること

  • 共有名義の建物を取り壊すには全員の同意が必要な理由
  • 同意がない状態でどこまで手続きを進められるのか
  • 費用・行方不明・ローン残債など、解体が進まなくなる場面ごとの対処法
  • 話し合いが難しいときに共有状態から抜け出す3つの方法
  • 今の状況を最短で解決するために取れる選択肢

 

共有名義の建物は原則として1人では取り壊せない

共有名義の実家を前に、取り壊しを巡って意見がわかれる共有者たちのイメージイラスト

まずは、なぜ1人では家の取り壊しを進められないのか、反対する人がいる場合にどこまで進められるのかを見ていきましょう。

1-1. 建物の取り壊しには共有者全員の同意が必要

共有名義の家を1人で取り壊せないのは、建物を壊す行為が、建物の状態を大きく変える行為(変更行為)として扱われるためです。取り壊しだけでなく、増改築や売却も同じく、共有者全員に影響が及ぶ行為に当たります。

そのため、共有名義の建物を取り壊すには、共有者全員の同意が必要です。たとえ自分の持分が大きくても、他の共有者が反対していれば、単独で話を進めることはできません。

ここで混同しやすいのが、「自分の持分があるのだから、その範囲で決められるのではないか」という点です。しかし、建物全体を取り壊す以上、影響は自分の持分だけにとどまりません。持分割合ではなく、全員の同意があるかどうかが基準になります。

持分を持っていることと、建物全体の取り壊しを決められることは別の話として理解しておくといいでしょう。

出典:e-Gov法令検索『民法第251条

1-2. 同意がない状態で取り壊しの手配はどこまで進められる?

反対している共有者がいる場合でも、すべての準備ができなくなるわけではありません。たとえば、解体費用の目安を知るための見積もり依頼や現地調査であれば、建物の状態そのものを変える行為ではないため、単独で進めることができます。

ただし、残置物の処分は別です。自分には不要に見える物でも、他の共有者にとっては価値のある物や、勝手に処分してほしくない物である可能性があります。家財や仏壇、写真、書類などは特に認識のずれが生じやすく、確認なく処分すると争いになりかねません。

また、実際の解体工事の契約は、共有者全員の同意が前提になります。契約書には全員の署名押印が求められるのが一般的で、1人でも同意していない共有者がいれば、契約も着工も進められません。

整理すると

  • 見積もり依頼 → できる
  • 現地調査 → できる
  • 残置物処分 → 危険(トラブルになりやすい)
  • 解体契約 → できない
  • 着工 → できない

ということになります。見積もりや現地調査までは進められても、解体契約と着工は全員の同意がなければ難しい、と理解しておきましょう。

1-3. 「一部解体」や「無断解体」を強行した場合の法的リスク

「全部を壊すのは難しくても、塀だけならいいのでは」「屋根の一部だけなら問題ないのでは」と考えることもあるかもしれません。ただ、共有名義の建物に元へ戻せない変更を加える以上、それが一部であっても、単独で進めてよいとは言えません。

建物全体を取り壊していなくても、他の共有者から見れば「勝手に価値を下げられた」「修復費用がかかる状態にされた」と受け取られる可能性があります。一部であっても、結果として共有者全員に影響が及ぶ点は変わらないためです。

これに対して、共有者の同意を得ないまま解体業者へ発注し、建物そのものを壊してしまう無断解体は、さらに問題が大きくなります。共有物を勝手に壊したとして、損害賠償を請求される可能性があり、場合によっては刑事責任が問題になる余地もあります。

鍵の交換や荷物の搬出といった行為も含め、他の共有者を排除する形で進めると対立が一気に深まりやすくなります。いずれも、単独で進めるべき場面ではないと考えておく必要があります。

出典:e-Gov法令検索『民法第709条』『刑法260条

1-4. 危険な空き家は単独で対応が必要になる場合もある

ただし、老朽化や管理不全によって建物の状態が著しく悪化し、近隣住民や通行人に被害が及ぶおそれが切迫している場合は、たとえ共有者1人であっても対応を考えなければならないケースがあります。たとえば、外壁が剥がれ落ちそうになっている、屋根材が飛散しそうになっている、建物が大きく傾いているといった状態がこれに当たります。

このような状況では、危険を防ぐための応急的な対応が、共有者全員の同意が必要な「変更行為」ではなく、現状の被害拡大を防ぐための「保存行為」に該当する可能性があります。

出典:e-Gov法令検索『民法第252条

 

1-4-1. 緊急の取り壊しには客観的な記録を残す

ただし、ここで注意しておきたいのは、「危なそうだから壊してよい」という話ではない、ということです。

応急処置として認められる範囲と、建物全体の解体のように共有者全員の同意が必要な行為は、同じではありません。後に他の共有者との間でトラブルになった場合、どの程度の危険があり、どこまでの対応が必要だったのかは、最終的に裁判所が判断することになります。そのため、自分の判断だけで「これは保存行為だ」と決めつけて動くのは危険です。

まずは、危険な状態を客観的に示せる材料として、以下の対応をしておくと、後々の備えになります。

  • 自治体から指導や勧告が出ていないかを確認する
  • 建物の状態が分かる写真を残す
  • 解体業者や建築士に現地を見てもらって報告書を発行してもらう
  • 自治体に相談した記録を残す

建物が危険な状態であれば、まずは自治体や専門家に相談したうえで、どこまでが応急対応として必要なのか、全面解体まで進めてよい状況なのかを慎重に見極めるようにしましょう。

解体費用・行方不明・ローン残債|トラブル時の取り壊しはどうなる?

解体費用の負担や共有者との連絡トラブルに頭を抱える人のイメージイラスト

共有者全員の同意が取れたとしても、実際には費用の問題、共有者側の事情、住宅ローンの有無によって、解体の話がさらに複雑になることがあります。

ここでは、解体費用を誰が負担するのか、共有者と連絡が取れないときはどうなるのか、住宅ローンが残っている場合はどう対処すればよいのかなど、実際に解体の話が進まなくなりやすい場面について見ていきます。

2-1. 共有者が解体費用を払わない場合は代表者が立て替える

共有不動産の解体費用は、共有者全員が持分割合に応じて負担するのが原則です。しかし実際には、全員が解体に賛成していても、「今はお金がない」「あとで払う」と言ったまま費用を出さない共有者がいることもあります。こうなると費用負担の話がまとまらず、工事の着工時期も定まらなくなってしまいます。

そのため、代表者が一旦全額を立て替えて解体を進めるケースもあります。ただし、解体自体は進められても、立て替えた費用を回収できるかどうかは別の問題です。立て替えた費用は後から他の共有者に請求できますが、相手が支払いに応じなければ、内容証明郵便を送ったり、法的手続きをとったりする必要が出てきます。

立て替える場合は他の共有者から回収できる見込みがあるかどうかも含めて、事前に検討しておくことが大切です。

出典:e-Gov法令検索『民法第253条

2-2. 行方不明・認知症・死亡した共有者がいると解体できない

共有者が行方不明であったり、認知症であったり、すでに亡くなっている場合は、本人の意思確認ができないため、そのままでは建物の解体を進めることができません。

2-2-1. 行方不明の場合

共有者が行方不明の場合、本人に連絡が取れないため解体への同意を得ることができません。共有名義の建物を取り壊すには全員の同意が必要なので、連絡が取れない共有者が1人でもいると、そのままでは解体契約を結べない状態になります。

「返事がないなら進めても良い」とはならず、本人の代わりに手続きをできる人がいる状態を整えることが必要です。具体的には、裁判所に申し立てて「不在者財産管理人※」を選任してもらうなどの対応が求められます。

 

※行方不明の本人に財産がある場合に、本人に代わって財産を管理する人のこと

出典:裁判所『不在者財産管理人選任

 

2-2-2. 認知症の場合

共有者が認知症で、解体に同意できるだけの判断能力があるか微妙な場合も注意が必要です。建物を取り壊すには共有者全員の「有効な同意」が必要ですが、判断能力が十分でない状態での同意は、法律上認められない可能性があります。民法では、判断能力がない状態でされた契約などは無効とされているためです。

この場合は、裁判所を通じて「成年後見人」を選任してもらう手続きが必要になります。また、本人が住んでいる家を処分する場合は、成年後見人が選任された後でも、家庭裁判所の許可を別途得なければなりません。

出典:e-Gov法令検索『民法859条の3

 

2-2-3. 共有者が死亡している場合

共有者が亡くなっている場合は、まず亡くなった人の持分を誰が相続したのかを確認する必要があります。相続登記や遺産分割が済んでいなければ、誰が共有者なのかが明確でなく、誰から同意を取ればよいかも定まりません。

解体の話を進める前に、建物の登記簿謄本で所有権の登記状況を確認し、相続登記が済んでいるかを把握することが先決です。まだ済んでいない場合は、亡くなった共有者の相続人を確定し、誰が持分を引き継ぐのかを明らかにしたうえで、相続登記を進めることが必要になります。

 

2-3. 住宅ローンが残っている場合は金融機関の承諾が必要

建物に住宅ローンが残っていて抵当権が設定されている場合は、共有者全員が解体に賛成していても、それだけで取り壊しを進めることはできません。抵当権が付いた建物は金融機関にとってローンの担保となっているため、解体するには事前に金融機関の承諾を得ることが必要です。

ただし、承諾を得ればすぐに取り壊せるとは限りません。建物をなくすと担保の内容が変わるため、ローンの返済方法や今後どの資産を担保にするかを含めて条件を調整する必要があります。たとえば、建物のローンを完済する、一部を繰上返済する、土地だけを担保として残す、別の資産を担保に入れるといった対応を求められることがあります。

承諾を得ないまま解体を進めると、契約違反とみなされ、ローン残債の一括返済を求められるおそれもあります。解体を考え始めた時点で金融機関に相談し、少なくとも工事を発注する前には、返済方法や担保の扱いを含めた条件を確認しておくようにしましょう。

取り壊しの合意が難しいときに「共有状態から抜け出す」3つの方法

共有状態から抜け出す方法を提案する専門家のイメージイラスト

ここまで見てきたとおり、共有名義の家の解体は「全員の同意さえあれば終わる」という話ではありません。費用負担、共有者それぞれの事情、ローン残債が絡んでくると、解体にこだわるほど苦労が長引くことになります。

そんなときは、建物を取り壊すことにこだわるよりも、自分だけ共有状態から抜け出すことを優先したほうが早く解決できる場合もあります。

3-1. 共有者が家を残したいなら「自分の持分を買い取ってもらう」

他の共有者が「実家は壊したくない」「このまま残したい」と考えているなら、その人に自分の持分を買い取ってもらう方法があります。自分は共有状態から抜けたい、相手は家を残したいという形で希望がわかれているなら、解体の話を無理に進めなくても、話し合いによって共有関係を終わらせられる可能性があります。

ただし、持分を買い取ってもらうには相手に資金が必要です。どうしても早く共有関係を終わらせたい場合は、無償で譲るという方法も考えられますが、その場合は受け取った側に贈与税が課される可能性があります。後から認識のずれが生じないよう、税負担も含めて事前に確認しておくことが重要です。

共有者同士で話し合える余地があるのであれば、検討する価値のある方法といえるでしょう。

3-2. 話し合いができない場合は「共有物分割請求訴訟」

共有者同士の話し合いで解決できない場合は、共有物分割請求訴訟を検討することになります。持分の買取がまとまらないときだけでなく、条件が折り合わないなど協議での解決が難しいときに取れる手段です。

共有物分割請求訴訟とは、裁判所に申し立てをすることで、不動産をどのように分けるかを判断してもらうものです。建物のように物理的に分けることが難しい財産の場合は、共有者同士で金銭のやり取りをして持分をまとめる方法や、不動産全体を売却して代金を分ける方法が取られることがあります。

時間や費用の負担も避けられないため、共有者同士の話し合いで解決できない場合の次の手段として位置づけるのが現実的です。

 

3-3. 今すぐ問題から解放されたいなら「自分の持分だけ売却」

共有者とこれ以上関わりたくない、話し合いにも管理にも疲れた、という方にとっては、自分の共有持分だけを手放す方法が最も現実的な選択肢です。

建物全体を売却する場合は共有者全員の同意が必要ですが、自分の持分だけであれば、他の共有者の同意を得なくても売却できます

権利関係が複雑な共有不動産は通常の不動産取引では一般の個人への売却が難しい一方、共有持分を扱う専門業者であれば買い取ってもらえる場合があります。

「今すぐ問題から離れたい」「固定資産税や連絡のストレスを終わらせたい」という方にとっては、スピードと手離れの良さが大きな利点になるでしょう。

出典:e-Gov法令検索『民法第206条

 

まとめ:共有建物の取り壊しが難しい場合は専門家に相談を

共有建物の取り壊しについて専門家に相談するイメージイラスト

 

共有名義の建物取り壊しについてのまとめ

  • 共有名義の建物を取り壊すには共有者全員の同意が必要で、たとえ持分が大きくても単独で進めることはできない
  • 同意がない状態でも見積もりや現地調査は進められるが、解体契約・着工は全員の同意が必要で、残置物の処分も慎重に判断すべき
  • 費用を出さない共有者・行方不明・認知症・死亡・ローン残債など、同意が取れても解体まで進めなくなる要因は多い
  • 解体にこだわらず、持分の買取交渉・共有物分割請求訴訟・持分売却という形で共有状態から抜け出す方法もある
  • 話し合いが進まず疲弊しているなら、他の共有者の同意なく動ける「持分売却」が負担を軽減する選択肢になり得る

共有名義の建物の取り壊しには、法律上「全員の同意」が必要です。話が通じない共有者がいる限り自分一人で強行することはできず、無断で動けば損害賠償のリスクも生じます。同意が取れた場合でも、費用負担・共有者の事情・ローン残債が絡めば、解体の話はさらに長引くことになります。

進まない話し合いや管理の負担に疲弊しているなら、無理に解体を目指すよりも、自分の持分を売却して共有関係から抜け出すことを検討してみてください。他の共有者の同意がなくても動ける、今の状況から最も早く離れられる方法です。

今の行き詰まりは、共有名義という法律上の仕組みから生じている問題です。共有持分専門の【ラクウル】であれば、「持分がいくらで売れるのか」「どうすれば共有関係から抜け出せるのか」をご相談いただけます。まずはお気軽にお問い合わせください。


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監修者

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この記事のまとめQ&A

共有名義の建物は自分一人で取り壊すことはできますか?

できません。建物の取り壊しは「変更行為」にあたり、共有者全員の同意が必要です。持分割合に関係なく、1人でも反対していれば解体は進められません。

共有者の同意がない場合でもできることはありますか?

見積もり依頼や現地調査は単独で行えますが、解体契約や着工はできません。また、残置物の処分はトラブルになりやすいため慎重に判断する必要があります。

無断で建物を取り壊した場合はどうなりますか?

他の共有者から損害賠償を請求される可能性があります。場合によっては刑事責任が問われることもあり、無断解体は大きなリスクを伴います。

共有者と話し合いができない場合はどうすればいいですか?

共有物分割請求訴訟を行う方法がありますが、時間や費用がかかります。現実的には、持分の買取交渉や、自分の持分のみを売却して共有状態から抜ける方法も検討されます。

すぐにこの問題から解放される方法はありますか?

自分の共有持分だけを専門業者に売却する方法があります。他の共有者の同意が不要で、管理やトラブルから早く解放される現実的な手段です。

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