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離婚した元配偶者が自己破産したと知り、一緒に買った家から追い出されてしまうのではないかと、不安を抱える方は少なくありません。住宅ローンや名義がそのままになっているなら、なおさら気がかりなはずです。
先にお伝えすると、自己破産の手続きそのもので処分されるのは、破産した本人の持分だけで、もう一方の持分は対象にはなりません。ただし、住宅ローンと抵当権が残っている場合は、もう一方の持分まで巻き込まれる可能性があります。
いずれの場合も、競売や訴訟になる前であれば、自宅を守ったり、損失を抑えて共有関係から抜け出したりする方法は残されています。どこまで影響が及ぶかは、ローンの状況や契約形態によって変わります。
本記事では、共有者の自己破産で何が起きるのかを整理し、今からでも取れる対処法をローンの返済状況ごとに解説します。
この記事でわかること
- 自己破産で処分されるのは誰のどの持分か
- 連帯債務で残債を一括請求される仕組み
- ペアローンで背負う返済はどこまでか
- 自分の持分が競売に巻き込まれる条件
- ローンの返済状況ごとに取れる対処法
目次
共有名義で片方が自己破産すると何が起きるか

共有名義の不動産は、片方が自己破産すると家全体が一気に処分されるように思えますが、実際に手続きの対象となる範囲は限られています。
1-1. 整理されるのは破産した側の持分だけ
まず押さえておきたいのは、元配偶者の自己破産の手続きそのもので処分されるのは、破産した本人の財産だけだという点です。自己破産では、破産した人の財産が破産財団というまとまりに集められ、裁判所が選んだ破産管財人(多くは弁護士)が、それを売ってお金に換え、債権者へ配ります。
共有名義の家であれば破産した本人の持分だけで、もう一方の持分は破産財団に入らず、破産管財人が処分することはありません。お金に換えられるのは破産した本人名義の財産に限られます。
ただし、家全体に住宅ローンの抵当権が付いている場合は、元配偶者の破産とは別に、銀行が抵当権をもとに家全体を競売にかける権利を持っています。つまり、残った側の持分まで巻き込まれるかどうかは、ローンと抵当権が残っているかどうかで決まるということです。
1-2. 財産分与で得た持分は原則無効にならない
離婚の財産分与で元配偶者から持分を受け取っていた方は、元配偶者の破産でその持分まで取り上げられるのではないかと不安になるかもしれません。しかし財産分与は、夫婦の財産を公平に分ける正当な手続きです。正当に受け取った持分である以上、原則として否認の対象にはならず、そのまま残ります。
例外は、公平な分配といえる範囲を超えて渡していた場合です。財産分与のかたちを借りて財産を逃がしたとみなされるようなケースで、このときは渡しすぎた部分だけが否認され、破産財団に戻されて売却されます。逆に、分け方が公平の範囲に収まっていれば、離婚から間もなくても否認されることはなく、否認されるかどうかは年数ではなく渡した量が公平かどうかで決まります。
なお、住宅ローンの残債が家の価値を上回るオーバーローンの場合は、受け取った持分にそもそも売ってお金になる価値がないため、否認の対象になりません。
自己破産時点で連帯債務のローンが残っていた場合

連帯債務で住宅ローンが残っている場合、元配偶者の自己破産をきっかけに、残債の一括請求から自宅の競売へと進みます。何が起きるのかを順に見ていきましょう。
2-1. 代位弁済で残債全額を一括請求される
連帯債務で住宅ローンを契約しており、居住中のご自身がローンの返済をしている場合、「自分はきちんと払えているのに、どうして一括請求されなければならないのか」と思うかもしれません。
連帯債務の住宅ローンには、分割払いが認められなくなり、残り全額を一括返済するよう求められる事由がいくつか定められています。契約者の自己破産もその一つです。
家に住み続ける側が毎月きちんと払い続けていても、元配偶者が自己破産した時点で分割払いは打ち切られ、残された債務者は残債の全額を一括で返済するよう求められます。自分の支払いに落ち度があるかどうかは関係なく、同じローンを借りている相手が破産したという一点で、一括返済の対象になるのです。
流れとしては、まず保証会社が銀行へ残債を立て替えて返済し(代位弁済)、保証会社から残された債務者に対し、残債の全額を請求します。
2-2. 抵当権で自宅全体が競売にかけられ残債が残る
一括請求された残債を払えないと、家全体に付いた抵当権をもとに、保証会社が自宅全体を競売にかけます。競売では内覧ができず、買主に引き渡される保証もないなど、通常の売買にない制約が多いため、落札額は市場価格の7割程度まで下がるのが一般的です。
競売の落札額が残債に届かなければ、差額は借金として残ります。元配偶者は自己破産で支払いを免れているため、その借金は自己破産していない側だけが背負います。たとえば残債が1,800万円で、競売による売却代金が1,400万円だった場合、差額の400万円が借金として残ります。競売は通常の売却より安くなりやすいため、自宅を手放したうえに、まとまった借金まで残ることになります。
ペアローンは、夫婦が別々に2本の住宅ローンを契約する形です。一方が自己破産した場合に一括返済の対象になるのは、破産した本人のローン残債だけで、破産していない側のローンは引き続き分割で返済できます。連帯債務のように、2人分のローン全額を一度に返済する必要はありません。
ただしペアローンでは、お互いが相手のローンの連帯保証人になっているのが一般的です。自己破産で免責されるのは破産した本人の支払義務だけなので、元配偶者が免責されても、その残債は連帯保証人として残された側に請求されます。結果として、自分の月々のローン返済に加えて、元配偶者が借りたローンの残債を一括で返すよう求められます。
自己破産時点でローンを完済していた場合

住宅ローンを完済している場合、元配偶者の持分は破産管財人が処分します。共有者への買取の打診から競売まで、どう進むのかを順に見ていきます。
3-1. 20万円超なら管財人が持分を換価する
ローンを完済して抵当権がない場合、元配偶者の持分は破産管財人が売ってお金に換え、元配偶者の借金の返済に充てます。対象になるのは、売却金額が20万円を超えることが見込める財産です。
管財人が持分を現金化する方法は、大きく3つあります。
①他の共有者に買い取ってもらう
②第三者(共有持分の買取業者、投資家など)に売る
③競売にかける
管財人は債権者へ少しでも多く返すため、高く売れる順に進めます。多くの場合、もっとも高く売れやすい①から動き、まとまらなければ②、それも難しければ③、と回収できる金額が下がる順に移ります。
まず管財人は、破産手続の開始からおおむね1〜2ヶ月で、もう一方の共有者に「持分を買い取らないか」と打診してきます。共有者が買い取る意思を示した場合、管財人は不動産会社の査定をもとに価格を提示し、金額や引き渡しの条件をすり合わせます。共有持分は単独で売ると値が下がるぶん、価格には交渉の余地がありますが、破産手続での売却には裁判所の許可が必要で、相場より大きく下回る金額では認められません。共有者との話し合いには、3〜6ヶ月ほどかかるのが目安です。
共有者が買い取らなければ、管財人は元配偶者の持分だけを第三者に売ります。買い手になるのは、共有持分を扱う買取業者や投資家、訳あり物件を手がける不動産会社などです。それも難しければ競売にかけます。いずれの場合も、元配偶者の持分の所有権は、買い取った相手や落札した相手へ移ります。
個別の財産は、処分して見込める金額が20万円以下であれば、換価の対象から外れて、持分が処分されずに残ることがあります。ただし、売買しやすい自宅の持分でそうなるのは稀で、山林など売却の見込みが乏しい持分に限られます。
なお評価額は固定資産税評価額そのものではなく、不動産会社の査定額や実勢価格に持分割合をかけた、実際に処分して見込める金額を基に判定されます。
3-2. 共有物分割請求で自宅ごと競売にかけられる
管財人からの買取や競売によって持分を取得した第三者は、共有者である自分に対し、持分を売ってほしい、あるいは自分の持分を買い取ってほしいと、交渉を持ちかけてきます。持分だけを持っていても家を自由に使ったり売ったりはできないため、権利を一本化して、賃料や売却で利益を出そうとするからです。
交渉がまとまらなければ、第三者は共有物分割請求訴訟※に踏み切ります。建物は土地のように物理的に分けられないため、家全体を競売にかけて代金を持分割合で分ける方法がとられやすくなります。最初の競売で対象になったのは元配偶者の持分だけでしたが、この段階になると自分の持分を含めた家全体に影響が及ぶということです。
落札されると買受人(落札した人)から明け渡しを求められるため、住み慣れた自宅を出て行かなければならず、受け取れる金額も売却代金のうち持分に応じた分に限られます。
※共有物分割請求訴訟=共有状態を解消するために裁判所に分割方法を決めてもらう手続き
元配偶者が自己破産した今からできること

ここまで見てきたとおり、住宅ローンが残っているか完済しているかで、自分の持分が競売に巻き込まれるか、そして自宅に住み続けられるかは変わります。取れる対処法も、住宅ローンが残っている場合と完済している場合とで違います。
考えるべきことは、住宅ローンの残債をどう返していくかと、元配偶者の持分をどう扱うかの2つです。住宅ローンが残っている場合は、抵当権が不動産全体に付いているため、先に残債を処理しないと自宅を競売から守れません。完済している場合は、抵当権がなく残債の心配がないため、元配偶者の持分をどう扱うかが問題になります。
| ローンの状態 | 対処法 | 住み続けられるか | 名義・共有の状態 |
|---|---|---|---|
| 残っている | 全体を任意売却する | 手放す | 売却して共有も解消 |
| 残っている | 個人再生で住宅ローンを払い続ける | 住み続けられる | 共有のまま |
| 残っている | 残債を返して持分も買い取る | 住み続けられる | 単独名義になる |
| 完済している | 管財人から持分を買い取る | 住み続けられる | 単独名義になる |
| 完済している | 自分の持分を売る | 手放す | 共有から離れる |
どの対処法が向いているかは、自宅に住み続けたいか、手元の資金はどれくらいあるか、安定した収入があるかで変わります。住宅ローンの状態ごとに見ていきます。
4-1. ローンが残っている場合
住宅ローンが残っている場合は、元配偶者の持分をどうするかより先に、残債と抵当権をどう処理するかが問題になります。
4-1-1. 全体を任意売却して残債を圧縮する
競売よりも少しでも高く売って、残る借金を抑える方法です。家全体を売却することになるため、今の住まいを手放してもよいと考える方に向いています。
任意売却では、競売にかけられる前に、管財人や金融機関の合意を得て自宅を売却します。競売だと市場価格の7割程度まで落ちますが、任意売却なら8割から9割ほどで売れることが多いため、売却後に残る借金を小さくできます。引き渡しの時期もある程度は調整できるため、新居探しの時間を確保することも可能です。
ただし、任意売却には時間の制約があります。法律上の期限は競売の開札期日の前日ですが、その前日までに、買い手を見つけ、売買契約を結び、債権者全員の同意を得て、決済と引き渡しまで終えていなければなりません。ここまでにかかる期間は3〜6ヶ月が目安です。一括返済を求められている段階からでは、競売の手続きと並行して進めることになり、時間の余裕はありません。動き出しが遅れると競売が先に進んでしまうため、早く準備に入れるかどうかがカギになります。
4-1-2. 個人再生で住宅ローンを払い続けて家を残す
自宅に住み続けたい方で、毎月の返済を続けていける安定した収入がある場合に向いています。
個人再生は、裁判所を通して借金を減らし、原則3年(最長5年)で分割返済していく手続きです。住宅資金特別条項(住宅ローン特則)という制度を使えば、住宅ローンを従来どおり払い続け、自宅を競売にかけられずに残せます。
この方法の大きなメリットは、一括返済を求められた住宅ローンを、もとの毎月払いに戻せる点です。元配偶者の破産で残債の一括返済を迫られていても、住宅ローン特則のついた再生計画が認められれば、分割払いに戻して自宅に住み続けられます。保証会社が銀行へ立て替え(代位弁済)をしたあとでも、そこから6ヶ月以内に手続きを始めれば間に合うため、早めに動くことが大切です。
個人再生を検討するにあたっては、注意点が2つあります。ひとつは、この手続きで守れるのは自分の持分だけで、元配偶者の持分には手をつけられない点です。元配偶者の持分は破産手続のなかで処分される側のままなので、自宅を残せても、名義は元配偶者の持分を取得した相手との共有になります。もうひとつは、連帯債務(1本のローン)では使いやすい一方、ペアローン(2本のローン)では住宅ローン特則を使えないことがある点です。使えるかどうかは、契約の形や付いている抵当権の状況によって変わります。
4-1-3. 残債を完済して単独名義にする
手元に十分な資金があり、自宅を完全に自分のものにしたい場合の方法です。
抵当権を外すには、不動産全体に付いたローンをすべて完済する必要があります。連帯債務なら、一括返済を求められている残債の全額を返します。ペアローンの場合は、元配偶者の連帯保証人として元配偶者のローン分を一括返済し、あわせて自分のローン分も繰り上げて一括で返します。2本とも完済して、ようやく不動産全体に付いた抵当権が外れます。
ただし、抵当権が外れても、元配偶者の持分は破産管財人が処分しようとしているため、自宅はまだ共有名義のままです。破産管財人から元配偶者の持分を買い取って、はじめて自分の単独名義になります。
この方法で最もネックになるのは資金です。残債の一括返済に加えて、元配偶者の持分の買取代金も必要になるため、自己資金や親族の協力でどこまで賄えるかが分かれ目になります。
4-2. ローンを完済している場合
住宅ローンを完済していれば抵当権がなく、銀行に家ごと競売にかけられる心配はありません。考えるべきは、破産管財人が現金化しようとしている元配偶者の持分を買い取って自分の名義にするか、それとも自分の持分を売って共有から離れるか、という点です。
4-2-1. 管財人から元配偶者の持分を買い取る
自宅に住み続けたい方で、元配偶者の持分を買い取るだけの資金がある場合に向いています。
破産管財人が元配偶者の持分を売却しようとしているところに、共有者である自分が買取を申し出る方法です。管財人にとっても、競売や見知らぬ第三者への売却より、共有者に売るほうが多く現金を回収できるため、比較的交渉に応じてもらいやすい傾向があります。買い取れれば自宅全体が自分の単独名義になり、見知らぬ第三者と共有状態になる事態も避けられます。
買取価格は不動産会社の査定をもとに決まります。共有持分は単独より値が下がるぶん、価格には交渉の余地がありますが、破産手続きでの売却には裁判所の許可が必要で、相場を大きく下回る金額では認められません。
4-2-2. 自分の持分を売って共有から離れる
自宅を手放してもよいと考えている方で、共有関係を断ち切ることで元配偶者の破産手続きに巻き込まれたくない場合に向いている方法です。
共有名義の不動産は、元配偶者の持分と自分の持分が別々の財産として分かれている状態です。そのため、自己破産により元配偶者の持分が処分されても、自分の持分はそれとは切り離されて手元に残ります。住宅ローンを完済していれば抵当権もないため、自分の持分は自分の判断だけで売却可能です。
自分の持分を売却したい場合は、元配偶者の持分が第三者に渡る前に動き出すことが重要です。元配偶者の持分が破産手続きで第三者に売却されると、新しい共有者から持分の売買を持ちかけられ、共有物分割請求により競売にかけられる可能性があります。元配偶者の破産が判明してすぐに自分の持分を手放しておけば、見知らぬ第三者からの圧力に苦しむリスクを未然に防げます。
共有持分のみの売却では、市場価格の半分から3分の1ほどまで値下がりしやすいため、いくらで売れるかは先に査定で確かめておくといいでしょう。
まとめ:一人で抱え込まずにまずは状況の整理から

この記事のまとめ
- 自己破産で処分されるのは破産した本人の持分だけで、もう一方の持分は手続きの対象にならない
- ただし住宅ローンの抵当権が家全体に残っていると、競売で自分の持分まで巻き込まれる
- 連帯債務では残債の全額、ペアローンでは元配偶者のローン分を、一括返済するよう求められる
- ローンが残るなら任意売却・個人再生・完済による単独名義化で、競売を避ける道がある
- ローンを完済しているなら、管財人からの持分買取か自分の持分の売却で共有を整理できる
元配偶者の自己破産という思いがけない事態に直面して、何から手をつければよいのか迷うのは当然のことです。ただ、破産手続が始まってから競売や訴訟に至るまでには一定の時間があり、その間に動けるかどうかで、最後に手元へ残るものは変わってきます。
ご自身の状況に当てはめて考えると、「うちの場合はどうなんだろう」「この持分でも本当に売れるのかな」と、新しい疑問が浮かんでくるはずです。
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この記事のまとめQ&A
共有名義で片方が自己破産すると家全体が処分されますか?
いいえ。自己破産の手続きで処分されるのは破産した本人の共有持分のみです。ただし、住宅ローンが残っていて抵当権が設定されている場合は、抵当権の実行により家全体が競売となり、もう一方の持分も影響を受ける可能性があります。
共有名義の相手が自己破産すると住宅ローンはどうなりますか?
連帯債務の場合は、自己破産をきっかけに残債の一括返済を求められることがあります。ペアローンでは自分のローンは継続できますが、相手のローンについて連帯保証人であれば、その返済を求められる可能性があります。
住宅ローンを完済している場合でも共有持分は処分されますか?
はい。住宅ローンを完済している場合は、破産管財人が破産者の共有持分を換価します。まず共有者への買取打診が行われることが多く、まとまらなければ第三者への売却や競売が検討されます。
元配偶者が自己破産した場合、自宅を守る方法はありますか?
状況によって異なりますが、住宅ローンが残っている場合は任意売却や個人再生、残債を完済して持分を買い取る方法があります。住宅ローンを完済している場合は、破産管財人から共有持分を買い取ることで単独名義にできる可能性があります。
共有名義の相手が自己破産したら早めに対応した方がよいですか?
はい。競売や共有物分割請求などの手続きが進む前であれば、任意売却や持分の買取、共有持分の売却など選択できる対処法が残っています。状況を整理し、早めに専門家へ相談することが重要です。


