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親族間で共有持分を売買しようとしたとき、「身内だから話し合いで決められるだろう」と思っていたのに、価格のことで揉めてしまった。そんな経験をされた方は少なくありません。
親族間売買は、第三者への売却と違って当事者同士で条件を決められる柔軟さがある反面、感情が絡みやすく、価格設定を誤ると税務署から「みなし贈与」と判断されるリスクもあります。
本記事では、共有持分の親族間売買でトラブルになりやすいポイントを整理しながら、揉めにくい価格の決め方、残しておくべき書類と手続き、話がまとまらなかったときの選択肢まで、順を追って解説します。
この記事でわかること
- 親族間売買で価格設定が揉めやすい理由と、感情に流されない価格の決め方
- 安すぎる価格設定が「みなし贈与」と判断されるリスクと、適正価格の基準
- 親子間と兄弟間で引っかかりやすいポイントの違いと、納得してもらいやすい説明の仕方
- みなし贈与を疑われないために残しておくべき書類と手続きの進め方
- 話し合いが行き詰まったときに取れる選択肢と、それぞれのリスク
目次
親族間売買で最初に揉めやすいのは売買価格

親族間で不動産を売買する際、当事者同士の話し合いで最初につまずきやすいのが「価格の設定」です。身内だからこその甘えが出やすい部分ですが、税金のリスクも絡んでくるため慎重に進める必要があります。
1-1. 親族間では「安くしてほしい」と言われやすい
親族間で共有持分の売買について話し合うとき、身内同士だからということで「早く共有状態を終わらせたい」「多少安く譲ってほしい」という話になりやすいです。
しかし、あまりにも安く設定してしまうと、売る側としては損をした気持ちになりやすいうえ、取引に関わっていない他の親族から見ても不公平感が出て揉める原因になりかねません。かといって、金額が高すぎても相手が納得できず、話し合いがそこで止まってしまいます。
そのため、親族間での売買においては、まず「いくらで売るか」を、客観的な根拠を元に決めることが大切です。具体的な価格の決め方については、第2章で詳しく解説します。
1-2. 安すぎると「みなし贈与」のリスクがある
感覚で価格を決めてはいけないもう一つの大きな理由が、税金のリスクです。
親族間だからといって時価より著しく低い価格で持分を売買すると、税務署から「実質的には贈与に近い取引ではないか」と見られるおそれがあります。これが、いわゆる「みなし贈与」です。
みなし贈与と判断されると、本来の時価と実際の売買価格との差額分が贈与されたものとみなされ、買主側に贈与税がかかる可能性があります。さらに、その差額が年間110万円の基礎控除枠を超える場合は、超えた部分が課税対象になります。
せっかく親族間で協力して共有状態を解消しようとしたのに、後から税金の問題が生じてしまっては大変です。だからこそ、親族間売買であっても、適正価格を確認したうえで進めることが大切なのです。
親族間で揉めにくい売買価格の決め方

では、トラブルを防ぐための「適正価格」は、具体的にどのようにして決めていけばよいのでしょうか。ここからは、親族間で不公平感が出ず、税務署にも疑われない価格を決めるための手順を見ていきましょう。
2-1. まず不動産全体の価格を確認する
親族向けの価格をいきなり決めるのではなく、まずは不動産全体の適正な価格を把握することが大切です。不動産会社の査定価格を主な参考にしつつ、固定資産税評価証明書や路線価なども確認して、価格の根拠を複数持っておくと後で親族へ説明しやすくなります。
路線価は地価公示価格等の80%程度を目安に設定されているため、おおよその価格感をつかむ参考資料になります。
2-2. 持分割合をかけて基準になる金額を出す
不動産全体の価格が分かったら、そこに自分の持分割合をかけて、共有持分の基準となる金額を出します。たとえば、不動産全体の価格が3,000万円で、あなたの持分が3分の1だとすると、基準となる金額は1,000万円です。
まずはこの基準額を出してから、共有状態であることや支払い条件などを踏まえて、実際の売買価格を調整していくことになります。
2-3. 「なぜその金額か」説明できるようにしておく
通常、共有持分のみを第三者へ売却しようとすると、不動産全体の価格に持分割合をかけた金額よりも、安く取引される傾向があります。これは、第三者は他の共有者との関係がなく、名義の一部のみを購入したとしても、単独で自由に使えないことが理由です。
しかし、親族が買い取る場合は事情が異なります。すでに共有者である、あるいは他の持分も将来的に取得できる可能性があるなど、共有状態の解消や単独所有に近づく利益があるため、第三者よりも不動産を有効に活用しやすい立場にあります。
そのため、第三者向けの安い買取価格をそのまま親族間売買に当てはめると、「本来もっと使える立場なのに、なぜそこまで安く買えるのか」と不公平感が出やすくなるのです。
2-4. 親子間と兄弟間では揉めるポイントが異なる
親族の関係性によっても、価格設定で揉めやすいポイントは変わってきます。
親子間では、「身内なのだから安く譲ってもよいのでは」「金額をきっちり決めるのは冷たいのでは」といった感情が先に立ちやすく、価格の決め方が曖昧になりがちです。
一方、兄弟間では、実家に一方が住み続けているケースなどで、「なぜ身内にお金を払って買い取らなければならないのか」「なぜその金額になるのか」という不公平感が表面化しやすい傾向があります。
関係性によって何が引っかかりやすいかは異なりますが、いずれのケースでも共通して有効なのが、共有名義を整理するメリットと、放置し続けるリスクを先に示しておくことです。
2-5. 親族が納得しやすい事情を整理してから話をする
親族間での売買は感情的な対立で話が止まりやすいため、価格を決める前に「なぜ今、持分を整理するのか」という前提を揃えておくことが大切です。親族に納得してもらいやすい事情は、主に以下の3つに集約されます。
- 固定資産税や維持管理費をこの先も払い続ける負担があること
- 空き家のまま放置すると、老朽化による管理責任や近隣トラブルのリスクがあること
- そのまま次の相続が発生すると、さらに共有者が増えて整理が極めて難しくなること
この前提を伝える際、親子間(生前整理)であれば「相続が発生する前に整理しておかないと、後で子ども同士が揉める原因になる」と説明するのが自然です。一方、兄弟間(相続後整理)であれば「今整理しておかないと、次の代で権利関係がさらに複雑になってしまう」と伝えるのが効果的です。
この「なぜ整理するか」という前提が親族間で共有できていないと、価格の話だけをしてもなかなかまとまらないということは押さえておきましょう。
親族間売買を確実に成立させるための書類と手続き

親族間で適正な価格の合意ができても、それが後から税務署に証明できなければ意味がありません。税務調査が入った際にみなし贈与と疑われないために、必ず残しておくべき書類や記録を把握しておきましょう。
3-1. 価格の根拠になる資料を残しておく
みなし贈与を疑われたときに備えて、「なぜこの金額で売買したのか」を客観的に説明できるよう、価格の根拠となる資料を手元に残しておきましょう。
具体的には、不動産会社が作成した査定書や、固定資産税評価証明書、路線価の資料などが該当します。また、価格を決めるまでの話し合いのメモなども残しておくと役立ちます。
3-2. 親族間でも必ず売買契約書を作成する
親族間であっても、口約束だけで進めると「売買のつもりだった」「贈与のつもりだった」と認識がずれやすくなります。そのため、必ず不動産売買契約書を作成し、売買金額や支払期日、所有権移転の時期を明記しましょう。
また、後でトラブルになりやすい「契約不適合責任(旧瑕疵担保責任)」の有無についても明確にしておく必要があります。契約不適合責任とは、売買後に物件の状態や権利関係に問題が発覚した場合、売主が買主に対して負う責任のことです。
共有持分の売買では、持分割合の相違や他の共有者との権利トラブル、建物自体の隠れた瑕疵などが対象になりえます。親族間では物件の状態をお互いよく知っていることも多く、「現状有姿」として契約不適合責任を免除する形で合意するケースが少なくありません。
ただし、口約束では後になって「聞いていない」というトラブルの原因になり得るため、免除する場合も「免除する」と契約書に明記しておくことが重要です。
なお、作成した契約書には、売買金額に応じた「印紙税(収入印紙)」を貼付する必要があることも伝えておきましょう。
3-3. 銀行振込で送金記録を残す
実際に売買代金のやり取りがあったことを説明しやすくするため、現金の手渡しは避け、銀行振込を利用しましょう。
通帳や振込明細に「誰から誰へ、いつ、いくら支払われたか」という記録を残しておけば、後から売買の実態を客観的に示しやすくなります。
3-4. 名義変更は司法書士へ依頼し確実に完了させる
代金の決済が終わったら、法務局で「所有権移転登記(持分移転)」を行い、名義を変更します。売買契約を結んでいても、登記を完了させなければ法的に所有権が移ったことにはならないため、決済後は速やかに手続きを進める必要があります。
共有持分の移転登記は、必要書類の収集や申請内容の確認事項が多く、ミスがあると法務局から補正を求められることもあります。また、親族間売買では後から「贈与だった」と指摘されるリスクを避けるためにも、登記の日付や内容が重要な記録になります。
こうした理由から、親族間であっても司法書士へ依頼して確実に完了させるのが一般的です。
なお、買主側には登録免許税や不動産取得税などの費用負担が生じます。金額は物件の評価額によって変わるため、事前に概算を把握しておくと安心です。
分割払いにするときに決めておきたい条件

親族間の不動産売買では、金融機関の住宅ローンの審査が通りにくい傾向があるため、買主が一括で代金を支払えず、分割払いを希望されるケースが多くあります。
しかし、親族間だからと契約書を作らずに「毎月少しずつ払うよ」といった口約束だけで進めてしまうと、後になって「言った、言わない」のトラブルになりかねません。
トラブルを未然に防ぎ、お互いが納得して取引を進めるために決めておくべき項目を解説します。
4-1. 支払額と期限を曖昧にしない
親族だからといって「払えるときに払ってくれればいい」といった曖昧な約束をしてしまうと、後になって揉める原因になります。
トラブルを防ぐためには、売買代金の総額はもちろんのこと、毎月の支払額、支払日、そして完済予定日をしっかりと決めておくことが大切です。頭金を設定する場合も、その金額を明確にしておきましょう。
4-2. 支払いが遅れたときの扱いと契約内容を決める
親族間で無利息の分割払いにすると、税務署から「本来支払うべき利息分の負担が免除されている」と見られ、その分が贈与と判断されるおそれがあります。そのため、みなし贈与を疑われないようにするには、無利息とせず、銀行の金利水準などを参考にした妥当な利率を設定し、契約書に明記しておくことが大切です。
また、毎月の支払額や支払日、利息だけでなく、支払いが遅れた場合のルールも契約書に記載しておきましょう。たとえば以下のような条件を具体的に定めて書面に残すことで、条件が曖昧なまま進んで揉めるのを防げます。
- 「支払期日の翌日から遅延損害金を付加する」
- 「支払いを2回以上怠った場合は、残りの代金全額を直ちに一括で請求できる(期限の利益の喪失条項)」
こうした条項をあらかじめ契約書に盛り込んでおくことが、後々のトラブル防止につながります。
4-3. 名義を移す時期は原則として代金完済後にする
分割払いにおいて注意しなければならないのが、不動産の名義(所有権)を移すタイミングです。代金をすべて受け取りきる前に名義を買主に移してしまうと、万が一買主が破産して他の債権者に差し押さえられた際などに、代金が未払いになるリスクが残ってしまいます。
売主を守る観点からは、契約書に「所有権は代金全額の支払いが完了したときに移転する」と定め、名義変更の登記も完済後に行う形にするのが基本です。もしくは、買主側の保全として「所有権移転仮登記」を設定する方法もあります。
また、分割払いの期間が長期間に及ぶと、途中で当事者が死亡して相続が発生し、残金の請求権が相続人に移るなど権利関係が複雑化するリスクがあります。そのため、売り主と買い主の年齢を考慮しつつ、分割払いの回数はなるべく少なくするのが理想的です。
親族間売買がまとまらないときの選択肢

どんな話し合いを重ねても、親族間での売買がまとまらないケースは実際に起こります。そうした状況で無理に交渉を続けることは、時間的にも精神的にも消耗するだけです。ここでは、行き詰まったときに取れる手段をご紹介します。
5-1. 資金力がない・話し合いが平行線なら親族間売買はきっぱり諦める
相手に持分を買い取る意思があったとしても、一括・分割を問わず実際に「支払う資金力」がなければ、売買契約は絶対に成立しません。価格の根拠や事情を説明しても感情的な対立で話し合いが平行線をたどる場合も同様です。いずれのケースでも、解決が長引く間も固定資産税の負担や維持管理の責任を負い続けることになります。
さらに、将来新たな相続が発生した際に権利関係がさらに細分化し、次世代の家族に解決不可能なトラブルを押し付ける結果になってしまいます。そのため、資金がない場合や話がまとまらない場合は、早めに親族間売買に見切りをつけるべきです。
5-2. 徹底的に争うなら「共有物分割請求」だが時間と費用対効果に注意
どうしても話し合いで解決できず、強制的に共有状態を解消したい場合の最終手段として、裁判所に「共有物分割請求訴訟」を提起する方法があります。共有者の一人が申し立てることで、他の共有者が反対していても共有状態の解消を求められる手続きです。
ただし、裁判という手段を取ることで、親族関係が悪化するリスクがあります。また、解決までに長い時間がかかるうえ、弁護士費用や不動産鑑定費用などのコストも生じます。裁判所の判決によって不動産が競売(換価分割)にかけられることになった場合は、市場価格を大きく下回る金額になりやすい点も知っておく必要があります。
時間・費用・関係性への影響を総合的に踏まえて、費用対効果を慎重に見極めることが重要です。
5-3. 自分の持分のみを「専門業者」へ売却して抜け出す
いくら客観的な根拠を示して説明しても納得してもらえない、あるいは話し合いが膠着して前に進む見込みがないといった状況では、自分の持分だけ売却するのも選択肢のひとつです。
ただし、自分が共有状態から離脱できる一方で、残った親族は見知らぬ不動産業者と共有状態になることは理解しておく必要があります。
なお、共有持分は一般の不動産市場では買い手がつきにくいため、通常の不動産会社に仲介を依頼するのではなく、直接買い取ってもらえる共有持分専門の買取業者に依頼するのが最も早い方法です。
まとめ:親族間売買は「価格の根拠」と「記録」が要になる

共有持分の親族売買についてのまとめ
- 親族間売買では感情が絡みやすく、価格を感覚で決めると売主・買主双方に不公平感が生まれやすい
- 時価より著しく低い価格での売買はみなし贈与と判断され、買主に贈与税が課される可能性がある
- 売買後のトラブルを防ぐには、査定書や売買契約書・銀行振込の記録など価格の根拠と取引の実態を書面で残すことが重要
- 分割払いにする場合は、利率・支払日・遅延時のルールを契約書に明記し、名義変更は完済後に行うのが基本
- 資金不足や感情的対立で話がまとまらない場合は、共有物分割請求や共有持分専門業者への売却という選択肢がある
共有持分の親族間売買は、身内同士だからこそ価格が曖昧になりやすく、安すぎればみなし贈与のリスクが、高すぎれば話し合いが止まるリスクがあります。適正価格の根拠を揃え、売買契約書や送金記録をきちんと残すことが、税務上のトラブルを防ぐうえでも、親族間の関係を守るうえでも重要です。
それでも、資金面や感情的な対立で話がまとまらないケースは実際に多くあります。そうした場合は、無理に話し合いを続けるより、早めに別の手段を検討する方が結果的に損失を減らせることもあります。
共有持分の売却や、親族間売買がうまくいかない場合の対処法について迷っているなら、共有持分専門の買取業者であるラクウルに相談してみてください。査定や相談だけでも無料で受け付けています。
この記事のまとめQ&A
親族間で共有持分を売買する際、なぜ価格で揉めやすいのですか?
親族間では「安くしてほしい」という感情が働きやすく、客観的な基準が曖昧になりがちです。その結果、不公平感が生まれやすく、話し合いがこじれる原因になります。
親族間売買で安く売るとどんなリスクがありますか?
時価より著しく低い価格で売買すると「みなし贈与」と判断され、差額に対して贈与税が課される可能性があります。
共有持分の適正価格はどのように決めればよいですか?
まず不動産全体の査定価格や路線価などを基に価格を把握し、そこに持分割合を掛けて基準額を算出します。そのうえで条件を加味して調整するのが基本です。
みなし贈与と疑われないために必要な対策は何ですか?
査定書や評価資料など価格の根拠を残し、売買契約書を作成し、銀行振込で支払い記録を残すことが重要です。これにより取引の正当性を説明しやすくなります。
親族間売買がまとまらない場合はどうすればよいですか?
共有物分割請求訴訟で強制的に解決する方法や、自分の持分のみを専門業者へ売却する方法があります。状況に応じて負担やリスクを考慮して選択することが重要です。



