コラム

追い出せない共有者がいる実家|自分の持分だけ売って抜け出せる?

親の死後に実家を共有名義で相続したものの、兄弟の一人がそのまま住み続けていて話し合いにも応じてくれない。自分は別の場所で生活しており戻る意思もないのに、固定資産税や維持費の負担だけが続いている。そんな状況でお悩みではないでしょうか。

退去を求めても拒否され、訴訟まではしたくないものの、このまま共有関係に縛られ続けることに強いストレスを感じている方もいらっしゃると思います。

本記事では、共有者が住み続けていて追い出せない状況でも、相手と直接争うことなく、ご自身の「共有持分」だけを売却して共有関係から離れる方法について解説します。

 

この記事でわかること

  • 住み続けている共有者がいても、自分の共有持分だけを相手の同意なしに売却できる仕組み
  • 居住者がいる共有持分が一般仲介では売れにくい理由と、専門買取業者を使うべき理由
  • 専門買取業者に売却した場合のメリットと価格への影響
  • 家賃相当額請求が認められるケース・認められにくいケース
  • 家賃請求・共有物分割請求・持分売却の3つの選択肢をどの順番で検討すべきか

共有者が住み続けていても自分の持分だけを売却できる

共有持分の売却について説明する女性のイラスト

不動産に他の人が住み着いていると、「相手を退去させない限り売ることはできないのではないか」と思われるかもしれません。

しかし、相手が明け渡しに応じない状況であっても、あなただけが共有関係から抜け出すことは可能です。ここでは、その法的な仕組みについてお伝えします。

1-1. 自分の持分のみであれば相手の同意なしで売却可能

不動産全体を売却するためには、原則として共有者全員の同意が必要となります。そのため、住み続けている共有者が売却に反対している場合、家全体を売ることはできません。

しかし、ご自身が所有している「共有持分」のみであれば、他の共有者の同意を得ずに単独で売却することが可能です。共有不動産全体は全員の共有物ですが、各共有者の持分はそれぞれが自由に処分できる独立した財産として扱われるためです。

そのため、他の共有者が売却に応じてくれない場合や、関係がこじれて話し合いが難しい状況であっても、ご自身だけで売却を進められます。

e-Gov法令検索民法206条民法251条

1-2. 居住者がいる状態でも売却できる

他の共有者が住んでいる状態でも売却できるのか、不安に感じる方も多いかもしれません。

しかし、共有持分の売却は不動産という物理的な「モノ」ではなく、目に見えない「権利(所有権の割合)」が取引対象です。つまり、居住者がいる状態のまま、あなたが持っている「権利部分」だけを切り離して売却することになります。

そのため、他の共有者が住み続けている状態であっても、退去の有無に関わらず持分の売却自体は進められます。

居住者がいる共有持分は「専門の買取業者」への売却が現実的

共有持分を買取業者に売却するイメージイラスト

共有持分の売却自体は所有者本人の意思があれば可能ですが、他の共有者が住み続けている不動産の持分を手放す場合、一般の不動産会社を通じて売却するのは非常に困難です。そのため、共有持分を専門に扱う買取業者を利用することが現実的な選択肢となります。

 

2-1. 一般の不動産会社(仲介)では買い手がつきにくい

不動産の売却と聞くと、不動産会社に仲介を依頼することをイメージする方も多いと思いますが、共有者を追い出せない状態の不動産は、一般市場では需要が乏しいのが実情です。

買主の目線で考えると、主に以下の3つのハードルがあります。

  • 他人が居住しているため内覧ができない
  • 持分だけ買っても、自分が自由に住んだり貸したりできない
  • 権利関係が複雑で担保価値が低く、買主が銀行の住宅ローン融資を受けにくいため、原則現金一括で買える人に限られる

このように、共有不動産には買い手にとって制約が多いため、一般の個人を相手にする仲介市場では売却がほぼ困難であると言えます。

2-2. 専門の買取業者を利用するメリット

一般の不動産会社(仲介)を通じて売却するのが難しいからこそ、共有持分を専門に扱う業者に「直接買い取ってもらう」という選択肢が現実的になります。専門業者に直接買い取ってもらう場合、手続きや費用の面でいくつか大きなメリットがあります。

2-2-1. 最短数日で現金化でき仲介手数料も不要

専門の買取業者を利用する大きなメリットは、現金化の早さと、売主側の費用負担がゼロである点です。

一般の買主を探す「仲介」とは異なり、業者が直接買い取るため、買主探しの期間が省け、数日〜1ヶ月程度での現金化が可能です。

さらに、業者との直接取引になるため、通常仲介会社に成果報酬として支払う仲介手数料が不要になります。数十万円の出費を抑えられるのに加え、出張査定の費用や振込手数料なども含めて売主側の費用負担がないため、手元の資金を持ち出すことなく共有持分を手放すことができます。

2-2-2. 共有者との直接的なやり取りを避けられる

まず前提として、ご自身の持分を単独で売却すること自体は、法律で認められた正当な権利です。そのため、「勝手に売ってしまった」ということで他の共有者から損害賠償などの法的責任を問われることはありません

法的な問題がないことに加えて、売却後の共有者への通知や交渉はすべて買取業者が引き継ぐため、ご自身から共有者に直接事情を説明する手間もかかりません。万が一、共有者から直接連絡が来た場合でも、「すでに業者が窓口になっているので、そちらと話してほしい」と伝えて対応を任せられるため、当事者間のトラブルに直接巻き込まれるリスクを大きく軽減できます。

ただし、法的な責任はないとはいえ、事前の連絡なく第三者である業者に売却した場合、残された共有者から「勝手に売られた」と感情的なしこりや恨みを買うリスクがあることには注意が必要です。

 

2-2-3. 当年分の固定資産税は買主(業者)と日割りで清算できる

共有持分を売却する際、気になるのが「固定資産税の負担がいつまで続くのか」という点でしょう。

固定資産税は、毎年1月1日時点の所有者に対して1年分が課税されます。そのため、年の途中で持分を売却すれば、翌年以降の納税義務は発生しません。

一方で、売却した当年の固定資産税は、制度上は売主に納税義務が残りますが、売買の際には売却日以降の負担分を買主と按分して清算するのが一般的です。

つまり、専門業者に売却すれば、物件を手放すと同時にその年の税金負担も業者との間でクリアにできます。他の共有者と直接お金のやり取りをする必要がなくなり、固定資産税の負担や立て替えを巡って親族と揉めるストレスから解放される点は、大きなメリットといえます。

2-3. デメリット:共有持分のみの売却は価格が下がる傾向がある

買取業者に共有持分を売却する場合、「どれくらい安くなるのか」という点は多くの方が気にされるポイントです。結論からお伝えすると、業者の買取価格は、通常の不動産全体を売却した際の相場(不動産全体の市場価格×あなたの持分割合)と比較して、およそ1/2〜1/3程度に下がる傾向があります。

これだけ価格が下がる理由は、買い取る業者がその後の「居住者との交渉にかかる時間・費用・訴訟リスク」をすべて背負うためです。業者はこれらのリスク分や諸経費をあらかじめ査定額から差し引いて買い取ります。

ただし、査定価格は一律ではありません。不動産の立地や価値はもちろんのこと、「居住している共有者が話し合いに応じる余地があるか」「関係が完全に悪化していて裁判が避けられない状態か」といったその後の交渉難易度によっても大きく変動します。

請求・訴訟・売却のどれを優先すべきかの判断基準

どの方法を選ぶべきか判断に迷う男性のイラスト

ここまでは、専門業者への共有持分の売却という解決策について解説してきました。しかし、「もう持分売却しかない」と急いで決断して走り出す前に、他の方法についても知っておくことも大切です。

持分を売却すると決めている場合であっても、他にどのような選択肢があるのかを知っておくことで、現在の状況を客観的に分析し、ご自身にとって最適な判断が冷静に下せるようになります。

共有者が住んでいて明け渡しに応じない状況での選択肢としては、主に「家賃請求」「共有物分割請求」「自分の持分だけ売却」の3つがあります。

3-1. 家賃請求を優先すべき状態

相手に支払い能力があり、まだ話し合いの余地が残されている場合は、家賃相当額の請求を検討できます。

法律上、共有不動産を使用する人は、他の共有者に対して「自分の持分を超えて使用している分の対価」を支払う義務があります。そのため、共有者の一人が物件を独占して居住している場合、他の共有者は自分の持分に応じた使用対価(家賃相当額)を請求できるのが原則です。

ただし、相手が支払いを拒否した場合は、最終的に調停や不当利得返還請求訴訟といった法的な手続きが必要になります。

e-Gov法令検索『民法249条

3-1-1. 家賃請求が認められにくいケース

一方で、家賃請求は次のような状況では認められにくい傾向があります。

  • 相続開始前から被相続人の許諾を得て同居していて、そのまま住み続けている場合
  • もともと当事者間で無償で使わせる合意があった場合

このようなケースでは、法律上「無償で使う前提(使用貸借契約)」があったと推認されやすく、他の共有者からの家賃相当額の請求が否定されることがあります。

3-1-2. 家賃請求は根本的な共有状態の解消にはならない

家賃請求において注意すべきなのは、無事に相手から家賃を受け取れるようになったとしても、根本的な問題の解決には至らないという点です。

それは、単に「相手がお金を払ってそのまま住み続ける」状態になるだけであり、不動産を共有している状態そのものは継続するからです。

複数人でひとつの不動産を共有しているという複雑な権利関係が残り続けるため、いざ不動産全体を売却・活用しようとしても相手の同意が必要という縛りは変わりません。さらに、将来新たな相続が発生すれば、共有者が雪だるま式に増えて権利関係がより複雑化し、子どもや孫の代に問題を先送りにしてしまうリスクも消えません。

そのため、共有関係による縛りから抜け出して根本的な解決を希望する場合は、他の方法を検討したほうが良いでしょう。

3-2. 共有物分割請求(訴訟)を優先すべき状態

共有相手が、自分の持分の買取にも不動産全体の売却にも協力してくれない状況では、共有物分割請求という方法が選択肢になります。

共有物分割請求とは、裁判所を通じて共有状態の解消を求める法的な手続きです。裁判を起こすことで、「相手に自分の持分を買い取らせる(価格賠償)」、あるいは相手に買い取る資金がない場合には「不動産全体を競売にかけて売却し、そのお金を分ける(換価分割)」といった解決方法を裁判所によって命じてもらいます。

共有者を家から追い出せない・家賃も払ってもらえない問題を根本から解決できる強制力がありますが、いくつか大きな注意点があります。

  • 協議から調停、訴訟と進むため、解決までに半年から1年以上という長い時間がかかる
  • 弁護士費用や裁判にかかる費用(鑑定費用など)で、まとまった持ち出し費用が発生する
  • 競売が命じられた場合、落札価格は市場価格の5〜7割程度になる傾向があり、共有者全員の手取り額が大きく減るリスクがある

共有物分割請求はあくまでも最終手段と位置付け、話し合いや、ご自身の持分のみを売却する方法を優先することが得策です。

e-Gov法令検索『民法256条

3-3. 自分の持分売却を優先すべき状態

話し合いが行き詰まり、他の方法では解決の見通しが立たない状況では、自分の持分だけを売却することを優先的に検討しましょう。

たとえば、相手に連絡しても返答がない、話し合い自体が進まない、あるいはこれまでの経緯から任意での支払いが期待できないと感じている場合は、家賃請求を続けても状況が動かない可能性があります。

共有物分割請求も、解決までに時間がかかるうえ、仕事や家庭の都合で手続きを進める余裕がない、費用負担に踏み切れないといった事情がある場合は、現実的ではないと感じることもあるでしょう。

これ以上共有者と関わりたくない、できるだけ早く関係を整理したいと考えているなら、価格面で一定の割り切りは必要になるものの、持分売却は時間や精神的な消耗を抑えながら共有関係から離れられる現実的な手段です。

 

まとめ:追い出せない共有者がいるなら共有持分専門業者へ相談を

共有持分の売却について専門業者に相談するイメージイラスト

 

この記事のまとめ

  • 他の共有者が住み続けていても、自分の共有持分だけなら相手の同意なしに売却できる
  • 居住者がいる状態の持分は一般市場では買い手がつきにくく、専門の買取業者への売却が現実的な手段となる
  • 専門業者に売却すれば仲介手数料は不要で、売却後の共有者との交渉も業者が引き継ぐため当事者間のやり取りを避けられる
  • 買取価格は通常相場の1/2〜1/3程度になる傾向があるが、交渉難易度によって変動する
  • 話し合いが進まない・費用や時間の負担を避けたいという状況では、持分売却が共有関係から離れる最も現実的な選択肢になる

話し合いが進まない、請求しても動かない、裁判まではしたくない。そういう状況では、持分売却が共有関係から離れるための、数少ない選択肢のひとつになります。

「共有関係から離れる」一歩は、いきなり売却を決めることではなく、まずご自身の持分がいくらで売れるのか、どんな進め方ができるのかを知ることから始まります。

ラクウルでは、共有持分・居住者がいる物件・話し合いが進まないケースのご相談に特化した窓口を設けております。査定だけのご利用、情報収集だけのご相談も歓迎しております。もちろん、ご相談いただいたからといって売却を急かすことはありません。

他の共有者が住み続けていて動かせない、裁判や交渉までは踏み込みたくない、といった個別のご事情がある方も、どうぞお気軽にご相談ください。


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お持ちの物件の売却にお悩みの方へ向けて、さまざまな情報を発信します。

この記事のまとめQ&A

共有者が住んでいる実家でも自分の持分だけ売却できますか?

はい、可能です。不動産全体の売却には共有者全員の同意が必要ですが、自分の共有持分のみであれば他の共有者の同意なしに単独で売却できます。

居住者がいる共有持分はなぜ一般の不動産会社では売れにくいのですか?

他人が住んでいるため内覧ができないことや、購入しても自由に使えないこと、ローンが通りにくいことなどから需要が低く、一般市場では買い手がつきにくいためです。

共有持分を売却するならどのような方法が現実的ですか?

共有持分を専門に扱う買取業者へ直接売却する方法が現実的です。仲介と違い買主探しが不要で、短期間で現金化できる点が特徴です。

共有持分を業者に売却すると価格はどのくらい下がりますか?

一般的には、不動産全体の市場価格に対する持分割合と比べて、約1/2~1/3程度になる傾向があります。これは交渉や訴訟リスクを業者が負担するためです。

共有状態を解消するには持分売却以外にどんな方法がありますか?

主に家賃相当額の請求、共有物分割請求(裁判)、持分売却の3つがあります。話し合いが難しく早期解決を優先する場合は、持分売却が現実的な選択肢になります。

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