コラム

共有名義の解消方法6つを比較|費用・税金・放置リスクまで解説

親から実家を相続したものの、きょうだいと活用方針が合わず売却もできないまま、共有名義を放置して数年。相続登記義務化のニュースで「このままで大丈夫だろうか」と気になっている方もいるはずです。

共有名義を解消する方法は1つではなく、「共有者の同意が得られるか」「不動産を手放したいか持ち続けたいか」という2つの軸で、選ぶべき手段が変わります

本記事では、状況別にどの手段が合うかを判断するための材料として、各手段の費用・期間・税金の比較、そして放置した場合に科される過料といった法的リスクまで整理しました。

自分に合った方法を見つける手がかりとして、ぜひ最後まで読み進めてみてください。

この記事でわかること

  • 「同意の有無」と「手放すか」で決まる解消方法の選び方
  • 方法別の費用・期間・税金を比較した一覧
  • 共有者の同意なしで自分の名義から抜け出す3つの方法
  • 親族間売買のみなし贈与や持分放棄の贈与税リスク
  • 相続登記義務化による過料と必要書類の手続き

【状況別】最適な共有名義の解消方法と費用・期間

相続した実家の共有名義をどう解消するか悩む共有者のイラスト

共有名義を解消する手段は複数ありますが、どの方法が自分に合っているかは、「他の共有者の同意が得られるか」と「不動産を手放すか」という2つの軸で決まります。

まずは、ご自身がどのパターンに当てはまるのかを確認し、それぞれの手段にかかるコストや時間の目安を把握しましょう。

1-1. 「同意の有無」で決まる共有名義の解消方法

共有名義の解消手続きは、大きく分けて「①共有者全員の同意がある場合」と「②同意がない場合」2つのパターンに分けられます。ご自身の状況がどちらに当てはまるか、以下の一覧から確認してみてください。

各手段の具体的な内容やメリット・デメリット、注意点については、第2章および第3章で詳しく解説します。

1-1-1. 共有者の同意がある場合

他の共有者と話し合いができ、売却や分割の同意が得られる場合は以下の手段を選べます。

  • 不動産全体を売却する
    不動産を手放して現金で分けたい場合
  • 共有者間で持分を売買する
    特定の人が不動産を持ち続けたい(買い取りたい)場合
  • 分筆して単独名義にする(土地の場合)
    土地を物理的に切り分けて、それぞれが単独所有したい場合

1-1-2. 共有者の同意がない場合

相手が話し合いに応じない、または売却を拒否している場合でも、ご自身の判断だけで進められる手段があります

  • 買取業者に自分の共有持分を売却する
    相手と関わらず、すぐに手放して早く解放されたい場合
  • 自分の共有持分を放棄する
    無償でもよいので、とにかく自分の権利と責任を手放したい場合
  • 共有物分割請求訴訟を起こす
    費用と時間をかけてでも、法的な手続きで強制的に決着をつけたい場合
出典:e-Gov法令検索『民法第251条』『民法206条

1-2. 方法別の費用・期間・税金の比較

解消方法によって、必要な期間や費用、発生する税金は異なります。自分の状況で取れる方法を絞り込む際の参考にしてください。

解消方法 期間の目安 主な費用の目安 発生し得る税金
不動産全体の売却 3〜6ヶ月
  • 仲介手数料
    (売買価格×3%+6万円+消費税)
    ※400万円超の場合
  • 譲渡所得税
    (売却益が出た場合)
自分の持分のみ売却 数日〜1ヶ月
  • 直接買取なら仲介手数料なし
  • 譲渡所得税
    (取得費より高く売れた場合)
持分放棄 1ヶ月〜
  • 司法書士費用
    (数万円〜)
  • 登録免許税
    (移転する持分の固定資産税評価額×2%)
  • 贈与税
    (持分を受け取った側の共有者に課税)
共有者間売買 1〜2ヶ月
  • 売買契約書作成費用
  • 名義変更の登記費用
  • 不動産取得税(※)
  • 贈与税
    (みなし贈与に該当した場合)
分筆(土地のみ) 3〜6ヶ月
  • 測量・境界確定費用
    (数十万〜100万円超)
  • 登録免許税
    (1筆につき1,000円)
  • 特になし
    (持分割合通りに分けた場合)
共有物分割請求訴訟 半年〜2年以上
  • 弁護士費用
    (着手金・報酬金で50万〜150万円程度)
  • 裁判費用
    (印紙代など)
  • 換価分割の場合は予納金
    (東京地裁で約90万円)
  • 譲渡所得税
    (換価分割で売却益が出た場合)

※不動産取得税について:住宅・住宅用土地の取得については2027年3月末まで税率3%の軽減措置が適用されます(住宅以外の家屋は4%)。

「同意あり」で共有状態を解消する3つの方法

共有状態の解消方法を解説する専門家の女性のイラスト

共有者全員と連絡が取れ、売却や分割の方向性について話し合いができる状態であれば、不動産の価値を最大限に活かしながら共有名義を解消できます。

ここでは、全員の同意がある場合に検討すべき3つ方法と、注意点を解説します。

2-1. 不動産全体を売却する

共有者全員の合意を得て、不動産全体を第三者に一括売却する方法です。

共有持分のみを売却する場合とは違い、買主は不動産全体を一括で取得できるため、一般市場で買い手が見つかりやすく、最も市場価格に近い高値で売却できる可能性が高いのがメリットです

売却代金は持分割合に応じて1円単位で公平に分配できるため、相続後の遺産分割として最も円満な解決が期待できます。

出典:e-Gov法令検索『民法第251条

2-2. 共有者間で持分を売買して単独名義にする

共有者のうち特定の1人が他の共有者の持分を買い取り、名義を一本化する方法です。買い取った側は不動産を単独で自由に活用・処分できるようになり、売った側は共有関係から離脱して現金を得ることが可能です。

ただし、税務トラブルには注意しなければなりません。親族間や元夫婦間での売買で時価より著しく低い価格で取引すると、差額分が贈与とみなされて買主側に贈与税判定されるリスクがあります

そのため、不動産鑑定士や実績のある不動産会社に依頼して適正な時価(実勢価格)を算出し、必ず正式な「不動産売買契約書」を作成して代金授受の証拠を残しておくことが重要です。

出典:e-Gov法令検索『相続税法第7条

 

2-3. 土地を分割してそれぞれ単独所有にする

共有名義の不動産が「土地」である場合、1筆の土地を物理的に切り分けて複数の登記簿に分ける「分筆(ぶんぴつ)」を行い、それぞれを各共有者の単独名義に変更する方法もあります。

分筆を進めるには複数の条件をクリアする必要があり、特に重要なのは建築基準法上の「接道義務」です。都市計画区域内では、原則として「幅員4m以上の道路に、敷地が2m以上接している」必要があります。この基準を満たさない分け方をすると、分筆後の土地が「再建築不可」となり、資産価値が大きく下がる点には注意が必要です

また、多くの自治体では条例により「最低敷地面積制限」を設けており、基準は自治体ごとに異なり、住宅地では概ね50㎡〜100㎡程度を下回る分筆は認められないケースもあります。

土地の形状や広さに余裕があり、共有者全員が分筆後の土地活用に納得している場合にのみ有効な手段です。

「同意なし」で共有状態から抜け出す3つの方法

共有持分の売却手続きの書類を確認する専門家のイラスト

前章で解説したように、共有者全員の同意が得られれば、不動産の価値を最大限に活かして共有名義を解消できます。しかし、実際には「何度話し合っても意見が合わない」「相手が交渉にすら応じてくれない」といった膠着状態に陥るケースも少なくありません。

そのような場合でも、ご自身の判断だけで共有関係から抜け出す方法があります。

3-1. 自分の共有持分のみを専門業者へ売却する

不動産全体を売却するには共有者全員の同意が必要ですが、自分の「共有持分のみ」であれば、他の共有者の同意を得ることなく、単独の意思で自由に売却処分できると法律で認められています

ただし、共有持分だけを購入しても自由に不動産を使用できないため、一般市場で個人の買い手はつきにくいのが実情です。そのため、権利調整のノウハウを持つ共有持分専門の買取業者に依頼するのが現実的です。

買取価格の目安は、他の共有者との交渉リスクなどを業者が引き受けるため、「不動産全体の市場価格 × 自分の持分割合 × 1/2〜1/3程度」に下がります。それでも、他の共有者との面倒な交渉を経ることなく、共有関係から抜け出せる点は大きなメリットです。

出典:e-Gov法令検索『民法206条

 

3-2. 自分の持分を放棄する

自分の共有持分を「放棄」する意思表示をすれば、その持分は他の共有者へその持分割合に応じて帰属(移転)し、ご自身は名義から外れます。

ただし、放棄の意思表示をしただけでは不動産の名義は変わらないため、持分を受け取る他の共有者全員と共同で、法務局での「持分移転登記」を行う必要があります。もし相手が登記に協力してくれなければ、いつまでも名義は移らないままです

また、持分を無償で受け取った他の共有者には、贈与税と不動産取得税が課されるのに加え、持分移転登記には登録免許税もかかります。そのため、事前の相談なく無断で放棄すると、かえって大きなトラブルに発展する可能性がある点には注意が必要です。

出典:e-Gov法令検索『民法255条』、国税庁『相続税法基本通達9-12

3-3. 裁判所の判決で強制的に解消する「共有物分割請求訴訟」

話し合いがまとまらない場合に、裁判所へ共有状態の解消を求める法的手続きが「共有物分割請求訴訟」です。相手が交渉に応じなくても判決で決着がつく点が大きな強みですが、競売による売却(換価分割)を命じる判決が出た場合、共有者全員が不動産を手放すことになるうえ、市場価格の5〜7割程度の安値で落札された代金しか手元に残らないことになります

さらに、解決までに半年から2年以上かかることが多く、弁護士費用だけでも50万〜150万円程度、競売による換価が命じられた場合は、東京地裁などで約90万円の予納金も別途必要です。

時間とコストの負担が大きいため、ほかの手段を尽くしたうえで検討する最終手段といえます。

出典:e-Gov法令検索『民法258条』『民法256条

共有名義の放置リスクと相続登記の手続き

相続登記の手続きに必要な書類のチェックリストのイラスト

「共有者との話し合いがおっくうだから」「今は困っていないから」といって、共有名義の不動産をそのまま放置しておくのは危険です。近年では法改正によるペナルティが設けられたほか、税金の滞納による財産の差し押さえなど、放置するだけで自身の生活を脅かすリスクがあります。

ここでは、共有名義を放置した場合の法的リスクと、それを回避するための名義変更(相続登記)の具体的な手続きについて解説します。

4-1. 相続登記義務化による10万円以下の過料

共有者との遺産分割協議がまとまらず、名義変更を後回しにしていると、法的なペナルティを受けることになります。

2024年(令和6年)4月1日の不動産登記法が改正により相続登記が義務化され、不動産を相続したことを知った日から3年以内に登記申請を行わないと、正当な理由がない限り「10万円以下の過料」が科されることになりました

注意すべきは、義務化の施行前に発生した過去の相続分も対象になる点です。過去の相続分については、2027年(令和9年)3月31日までが猶予期限として設けられています。そのため、「いつか時間があるときに話し合えばいい」という先送りは難しくなっています。

 

4-2. 固定資産税の「連帯納税義務」による差し押さえリスク

不動産を共有している場合、固定資産税は共有者全員が「連帯納税義務」が課されます。連帯納税義務とは、各共有者が持分割合に応じた金額だけを納めれば済むものではなく、共有者全員が全額の納付義務を負うルールのことです。つまり、自分の持分がごくわずかであっても、他の共有者が税金を滞納すれば、自治体から自分宛てに全額の支払いを請求されます

他の共有者が固定資産税を払わない状態が続けば、納付期限の翌日から年2.8〜9.1%(2026年時点)の延滞金が加算されていきます。それでも督促を無視し続ければ、給与・預貯金・共有不動産の持分の差し押さえ、そして公売(自治体が滞納者の財産を強制的に売却する手続き)にまで発展しかねません。

出典:e-Gov法令検索『地方税法第10条の2第1項

4-3. 名義変更(相続登記)の必要書類と流れ

相続登記は、不動産を相続したすべての人に必要な手続きですが、共有者との合意の有無によって進め方が変わります

4-3-1. 【共有者全員で合意できる場合】遺産分割協議に基づく相続登記

遺産分割協議で「誰がどの不動産を取得するか」を決められれば、その内容に沿って相続登記を申請します。単独名義にも共有名義にもでき、合意した持分割合を登記簿に反映できます。

申請に必要な基本書類は以下のとおりです。

  • 登記申請書
  • 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本(除籍謄本・改製原戸籍を含む)
  • 被相続人の住民票の除票(または戸籍の附票)
  • 相続人全員の戸籍謄本および住民票
  • 対象不動産の固定資産評価証明書
  • 相続関係説明図

遺産分割協議による相続登記では、上記に加えて以下の書類が必要です。

  • 遺産分割協議書(相続人全員が署名し、実印で押印したもの)
  • 相続人全員の印鑑証明書

4-3-2. 【話し合いがまとまらない場合】単独で進められる2つの選択肢

他の共有者と合意できないままでも、自分一人で進められる方法が2つあります。

1つ目は、2024年4月に新設された「相続人申告登記」です。不動産の相続人であることを法務局に申し出るだけで義務を履行したとみなされる簡易的な制度で、各相続人が単独で申告でき、登録免許税も非課税です。とりあえず過料を避けたい場合に有効です。

2つ目は「法定相続分での相続登記」です。法定相続分による登記は民法上の「保存行為」にあたり、他の共有者の同意や協力がなくても単独で申請できます。将来的に自分の持分を売却することまで視野に入れる場合は、こちらを選びます。

法定相続分での相続登記は、上記の基本書類のみで申請でき、遺産分割協議書や印鑑証明書は不要です。

まとめ:状況に合った方法で共有名義から抜け出そう

共有名義の解消について専門家への相談を促す担当者のイラスト

この記事のまとめ

  • 共有名義の解消方法は、「共有者の同意の有無」と「不動産を手放すか」の2軸で選ぶ。
  • 全員の同意があれば全体売却・共有者間売買・分筆が可能。それぞれ費用や税金の注意点が異なる。
  • 話し合いがまとまらない場合は、持分売却・持分放棄・共有物分割請求訴訟の3つから選ぶ。
  • 相続登記義務化で2024年4月以降は3年以内の登記が必須。違反すると10万円以下の過料が科される。
  • 他の共有者と関わらずに抜け出したいなら、自分の持分のみを共有持分専門の買取業者へ売却するのが最も負担が少ない。

共有名義を解消する方法は、共有者の同意が得られるかどうかで取れる手段が変わります。話し合いがまとまる状況なら全体売却や共有者間売買が現実的ですが、膠着状態にある場合は、自分の持分だけを専門業者へ売却する方法が最も負担の少ない選択肢です

ご自身の状況に当てはめて考えると、「うちの場合はどうなんだろう」「この持分でも本当に売れるのかな」と、新しい疑問が浮かんでくるはずです。

ラクウルでは、共有持分のご相談を無料・秘密厳守で承っています。査定だけ、話を聞くだけでも問題ありません。ご家族や他の共有者に知られることなく、あなたのペースで進められますので、まずは下記フォームからお気軽にご相談ください。


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