コラム

【2026年法改正】財産分与の期限が過ぎても安心できない理由と共有名義の解消方法

離婚後、元配偶者と共有名義の不動産を持ったまま、「2年経てば財産分与の時効だから、もう安心だ」と思っていませんか?あるいは、2026年の財産分与期限延長のニュースを見て、「今さらお金を請求されるの?」と不安を感じているかもしれません。

結論からお伝えすると、共有名義の不動産を持っている限り、リスクが完全に消えることはありません。たとえ財産分与の請求期限が過ぎたとしても、相手は別の法律を用いてあなたを訴えることができ、最悪の場合、家が競売にかけられて市場価格より安く売却される可能性があります。

本記事では、財産分与の期限が過ぎても安心できない理由や、2026年4月の法改正によって離婚後の不安が長期化する背景、そして裁判や直接の話し合いをせずにご自身の持分だけを現金化し、共有関係から離れる方法を解説します。

「相手と関わりたくない」「経済的な損失を防ぎたい」と考えている方は、手遅れになる前にご一読ください。

 

この記事でわかること

  • 財産分与の期限が過ぎても、共有名義のままでは安心できない理由
  • 共有物分割請求に期限がなく、裁判に発展する可能性があること
  • 競売になると市場価格より低く売却されるリスク
  • 法改正によって財産分与をめぐる不安が長期化する理由
  • 相手の同意なく、自分の共有持分だけを売却できる方法

 

「財産分与の期限」が過ぎても安心できない理由

男女が不動産(戸建てとマンション)を前に悩んでいる様子のイラスト。共有名義の不動産について不安を抱えているイメージ。

多くの人が誤解しているのが、「離婚から2年(法改正後は5年)経てば、財産分与請求権が消滅するから、もう家を追い出される心配はない」という点です。

確かに期限が過ぎれば、元配偶者から「財産分与として持分を渡せ」と言われることはなくなります。しかし、不動産を共有している状態が続く限り、相手は別の法律を使って家の売却(現金化)を迫ることができます。

1-1. 共有物分割請求には期限がない

元夫婦間での清算手続きである「財産分与」とは別に、共有名義の不動産には「共有物分割請求(きょうゆうぶつぶんかつせいきゅう)」という手続きがあります。

これは、「共有状態を解消したいから、この不動産を何とかしてほしい」と、他の共有者に対していつでも請求できるというものです。例えば、相手から「家全体を売って現金を分けたい」と言われたり、「私の持分をあなたが買い取ってほしい」と金銭を要求されたりするケースです。

通常は話し合いからスタートしますが、まとまらない場合、相手(他の共有者)が裁判所に共有物分割請求訴訟を提起することが可能です。裁判になると、あなたの合意がなくても、裁判所の判断で処分方法が決められる可能性があります。

そして重要なのが、共有物分割請求の権利には期限がないという点です。たとえ離婚から10年、20年が経過していても、名義が共有のままである限り、相手はいつでも話し合いを求め、決裂すれば裁判を起こせるのです。

 

1-2. 裁判で競売になると市場価格より安く売られてしまう

もし元配偶者から共有物分割請求訴訟を起こされ、話し合いもまとまらなかった場合、どのような結果になるのでしょうか。最終的に裁判所が下す判決の多くは、「競売(けいばい)」です。

競売とは、裁判所の権限で強制的に不動産を売却し、その代金を分ける方法です。そして、競売での落札価格は市場価格の6〜7割程度まで下がる傾向にあります。

本来ならもっと高く売れたはずの資産が、裁判手続きによって安値で取引され、手元に残る現金が大幅に減ってしまうのです。ただ共有状態を放置していただけで、数百万円単位の損失を被るリスクがあることを認識しておく必要があります。

 

1-3. 2026年から財産分与の期限が「5年」に延長

共有物分割請求のリスクだけでも厄介ですが、2026年の民法改正で、財産分与の請求期間が延長される点にも注意しなければなりません。

これまで財産分与の請求期限は「離婚の時から2年」と定められていました。しかし、2026年4月1日から施行される改正民法により、期間が「5年」に延長されます

5年という期間があれば、不動産を取り巻く環境は大きく変化します。 例えば、離婚時には不動産の価値が低かったとしても、数年後に周辺の再開発などで地価が上がった場合、「現在の価格を基準に財産分与をやり直したい(差額を払ってほしい)」と請求される可能性も否定できません。

なお、施行日(2026年4月1日)より前に離婚が成立している場合は原則として従来の2年ルールが適用されますが、施行日以降に離婚する方は5年ルールの対象となります。

出典:e-Gov法令検索『民法768条』、法務省『民法等の一部を改正する法律の概要

「離婚届を出せば解決」ではない?登記と財産分与の違い

書類を手に持ち、不安そうな表情で考え込む男性のイラスト。離婚手続き後の不動産名義や財産分与について悩んでいる様子。

「離婚届はすでに提出したし、登記簿(名義)にも自分の名前が入っているから、権利関係は確定している」と考えている方もいるかもしれません。しかし、名義上の所有権と、財産分与における清算手続きは別の問題として扱われます。

2-1. 登記上の「名義」と実質的な「共有財産」

登記簿に記載されている持分は、「誰がどれだけ所有しているか」を第三者に示すものです。これは対外的な権利関係を明らかにするための情報であり、売却や担保設定の場面ではこの登記が基準になります。

一方で、財産分与は夫婦間の内部的な清算です。離婚時に財産分与の話し合いが終わっていなければ、その不動産は夫婦の共有財産として分与の対象になります。登記上の名義が確定していても、夫婦間の清算まで完了したことにはなりません。

たとえば、登記上は「2分の1ずつ」となっていても、購入時の頭金を一方が特有財産から多く負担していた場合には、その事情が財産分与で考慮されます。登記の持分割合と、最終的な取り分が一致するとは限らないのです。

つまり、登記は“外から見える持分”、財産分与は“夫婦間で決め直す持分”と考えると理解しやすいでしょう。そして、離婚届を提出しただけでは、この内部的な清算までは完了しないという点に注意が必要です。

 

2-2.  話し合いを先送りにするデメリット

「とりあえず離婚だけ成立させて、不動産やお金の話はあとで決めよう」と考える方は少なくありません。気持ちはよくわかります。離婚という精神的に消耗する手続きを終えたあと、すぐに財産の話し合いに向き合う余裕がない方も多いでしょう。

しかし、この先送りが後々、自分の首を絞める結果になることがあります。

財産分与では、頭金や住宅ローンの返済をどちらがどれだけ負担してきたかが重要な判断材料になります。その主張を裏付けるのが、通帳の記録や振込明細、領収書といった資料です。ところが、時間が経つほどこれらは自然と手元から失われていきます。「あのとき自分が多く払っていた」という記憶があっても、証明できなければ話し合いには反映されません

財産分与は感情ではなく、事実と資料で動くものです。根拠のない主張は交渉力を持たず、結果として不利な条件をのまされるリスクがあります。

つまり、共有持分の問題解決を先送りすることは、じわじわと自分が不利な立場に追い込まれていくことだと認識しておく必要があるのです。

持っているだけで負担に? 共有持分を放置するリスク

腕を組んだ男性が、お金の入った封筒を思い浮かべながら悩んでいるイラスト。共有持分を放置することで金銭的負担が生じるイメージ。

共有持分は「今すぐ困っていないから」とそのままにされがちですが、時間の経過とともに金銭的な負担が積み上がる可能性があります。

法的な紛争に発展しなくても、経済面で不利になる場面は少なくありません。

3-1. 不動産価格の上昇で解決金が増えるリスク

財産分与や共有物分割では、不動産は原則として「解決時点の時価」で評価されます。離婚当時の価格が固定されるわけではなく、話し合いや裁判が行われる時点の評価額が基準です。

離婚から数年のあいだに再開発や駅整備が進み、地価が上昇すれば、持分の評価額も引き上げられます。評価額が上がれば、その不動産の持分の価値も上がり、財産分与や共有物分割請求時に求められる解決金も増えることもあります

つまり、共有持分を持ち続けるということは、不動産の価格変動の影響を受け続けるということです。

3-2. どちらが住んでいても生じる「金銭トラブル」のリスク

共有不動産では、「誰が住んでいるか」によって金銭の負担関係が変わります。

まず、あなたが家を出て相手が住み続けている場合でも、共有者である以上、固定資産税などの負担は持分割合に応じて発生します。「自分は利用していないから支払う必要はない」と思っても、法律上の納税義務は残り続けるのです。

反対に、あなたが住み続けている場合は、相手から「私の持分を使用しているのだから、対価として家賃を払ってほしい」と請求される可能性があります。これは法律上「不当利得(ふとうりとく)」と呼ばれ、長期間になればまとまった金額を請求されることもあります。

さらに、建物の修繕費や管理費を「誰がどれだけ負担するか」で揉めることも多く、共有状態を続ける限り、こうした金銭的な調整や話し合いから逃れられないというのが実情です。

3-3. 相続や売却によって「共有者」が変わるリスク

共有状態が続くと、当事者以外の人物が権利関係に関わってくる可能性があります。

元配偶者が亡くなれば、その持分は相続人に引き継がれます。相手が再婚していれば、新しい配偶者やその子どもが共有者となることもあり、これまでとは立場の異なる相手と話し合いを行わなければならなくなる場合があります。

また、元配偶者が持分を第三者に売却することで、不動産業者や投資家が新たな共有者となるケースもあります。こうした第三者は収益を目的に取得するため、あなたの持分を安く売るよう迫られたり、逆に業者の持分を高値で買い取るよう要求されたりする可能性があるのです。

このように、共有持分は「何もしていない状態」であっても、固定資産税の負担や不動産評価額の変動、当事者の環境変化といった影響を受け続けます。時間が経つことで自然に解決する問題ではないと認識したうえで、状況が複雑になる前に対処することが重要です。

相手の同意は不要!「自分の持分のみ」を売却して解決する方法

「FOR SALE」と「SOLD OUT」の看板が付いた住宅のイラスト。共有持分のみを売却して解決するイメージ。

ここまで読んで、「リスクは理解したが、相手とはもう関わりたくない」と感じた方もいるでしょう。共有関係の問題は、話し合いや裁判でしか解決できないと思われがちですが、実際にはもう一つの方法があります。

それが、自分の持分だけを第三者に売却するという選択肢です。

4-1. 自分の持分は単独で処分できる

「共有なのに勝手に売っていいのか」と不安に思う方もいるかもしれません。不動産全体を売るには共有者全員の同意が必要だからです。

ただし、それは“家全体”の話です。あなたの持分そのものはあなたの財産であり、法律上は共有者の同意なしに単独で売却できます。

つまり、元配偶者と連絡を取りたくない、これ以上話し合いを重ねたくないという場合でも、自分の持分については自分の判断で処分を進められるということです。相手の意思に左右されずに動けるという点が、持分売却の大きな特徴です。

出典:e-Gov法令検索:民法206条

 

4-2. 共有持分専門の買取業者なら、素早く・内密に共有関係を解消できる

「持分だけを誰が買うのか?」と思われるかもしれませんが、一般の不動産市場では買い手がつきにくい共有持分も、「共有持分専門の買取業者」であれば買い取ってもらえます。専門業者を利用するメリットは以下の通りです。

4-2-1. 素早く共有関係を抜け出せる

財産分与の請求や共有物分割訴訟といったリスクが顕在化する前に、専門業者の買取なら最短数日〜1ヶ月程度で共有関係を解消できます。通常の売却活動では数ヶ月から半年以上かかることを考えると、そのスピードは大きなメリットです。

 

4-2-2. 周囲に知られずに手続き可能

専門業者はプライバシーへの配慮に長けており、査定から売買契約、決済までを他の共有者に知られずに進めることが可能です

 

4-2-3. 契約不適合責任が免除される

売却後に建物の欠陥(雨漏りなど)が発覚した場合、通常は売主が責任を問われることがあります。専門業者への売却であれば、この契約不適合責任を免除してもらえるケースがほとんどです

 

まとめ:元配偶者と揉める前に早期解決を

男性担当者が女性に説明をしているイラスト。専門家に相談し、早期解決を検討する場面のイメージ。

 

共有持分の財産分与についてのまとめ

  • 財産分与の期限だけを基準に放置するのは危険であり、共有名義のままでは法的リスクが残り続ける
  • 共有物分割請求はいつでも起こされる可能性があり、話し合いが決裂すれば裁判に進む
  • 裁判で競売となれば、市場価格より低い金額で売却されるおそれがある
  • 法改正により、離婚後も財産分与をめぐる問題が長く残る可能性がある
  • 相手の動きを待つのではなく、自分の共有持分を売却して早期に共有関係を解消する選択肢がある

共有名義の問題は、時間が解決してくれるものではありません。

相手が動いてから対応を考えるのではなく、共有関係をこのまま続けるのか、それとも区切りをつけるのかを、自分の意思で考えられる段階にあるうちに向き合うことが大切です


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監修者

斎藤岳志

斎藤岳志

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FPオフィス「ケセラセラ横浜」代表。ファイナンシャル・プランナー(CFP)、宅地建物取引士、相続診断士、資産形成コンサルタント、承継寄付診断士、2024年FP広報センタースタッフ。
マイホーム・投資用物件の購入や売却のサポート、相談を行う。 不動産購入前のセカンドオピニオンも提供。金融資産と実物資産を組み合わせた、バランスの取れた資産形成を目指したアドバイスを行う。
著書に「FP大家だけが知っている 資産形成に中古ワンルームを選ぶと失敗しない理由」

この記事のまとめQ&A

離婚から2年(改正後は5年)過ぎたら、共有名義の家はもう安心ですか?

共有名義の不動産を持っている限り、リスクが完全に消えることはありません。財産分与の請求期限が過ぎれば「財産分与として持分を渡せ」とは言われにくくなりますが、共有状態が続く限り、相手は別の法律を使って不動産の売却(現金化)を迫ることがあり、最悪の場合は競売に進む可能性があります。

共有物分割請求とは何ですか?期限はありますか?

共有物分割請求とは、共有名義の不動産について「共有状態を解消したいから、この不動産を何とかしてほしい」と他の共有者に対して求める手続きです。話し合いから始まるのが一般的ですが、まとまらなければ共有物分割請求訴訟を提起されることがあります。重要なのは、共有物分割請求の権利には期限がなく、離婚から10年・20年が経過していても、名義が共有のままである限り、相手はいつでも請求できる点です。

共有物分割の裁判になると、なぜ競売で安く売られるリスクがあるのですか?

共有物分割請求訴訟で話し合いがまとまらない場合、裁判所が下す判決の多くは「競売」です。競売では裁判所の権限で強制的に不動産を売却して代金を分けますが、落札価格は市場価格の6~7割程度まで下がる傾向があるとされています。共有状態を放置していただけで、数百万円単位の損失を被るリスクがある点に注意が必要です。

2026年の法改正で財産分与の請求期限はどう変わりますか?

これまで財産分与の請求期限は「離婚の時から2年」でしたが、2026年4月1日から施行される改正民法により「5年」に延長されます。施行日より前に離婚が成立している場合は原則として従来の2年ルールが適用され、施行日以降に離婚する方は5年ルールの対象となります。

相手の同意なしに、自分の共有持分だけを売却できますか?

不動産全体を売るには共有者全員の同意が必要ですが、自分の共有持分そのものは自分の財産であり、法律上は共有者の同意なしに単独で売却できます。一般の市場では買い手がつきにくい共有持分でも、共有持分専門の買取業者であれば買い取ってもらえることがあり、最短数日~1ヶ月程度で共有関係を解消できるとされています。また、他の共有者に知られずに進められる場合があることや、契約不適合責任を免除してもらえるケースがほとんどだと説明されています。

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