
目次
兄弟と相続した実家の持分が競売にかけられると、見ず知らずの第三者が共有者として加わります。知らない相手と実家を共有する状態は、できれば避けたいはずです。
どこまで対処できるかは、競売の進み具合によって異なります。落札される前なら競売を止めたり持分を買い取ったりでき、落札されたあとでも、実家を残す方法と共有から抜ける方法があります。
本記事では状況ごとに今できること整理します。ご自身の状況に当てはまる対処法を見つけてください。
なお、すでに兄弟の持分を取得した第三者(買取業者や投資家)から連絡を受けている方は、4章からお読みください。
※本記事では、姉妹・兄妹を含むきょうだい全般を『兄弟』と表記しています
この記事でわかること
- 他の共有者の持分が競売にかけられているか確認する方法
- 持分だけが競売になる場合と不動産全体が競売になる場合の違い
- 落札後に始まる買取交渉・賃料請求・訴訟などのリスク
- 落札を防ぐ第三者弁済・自己入札の条件と期限
- 落札後に実家を残す方法と共有状態から抜ける方法
目次
「競売にかけられているかも」と気づいたら確認すること

他の共有持分が競売にかけられていることに気づくきっかけは、人によってさまざまです。たまたま登記簿を見たら差押えが入っていた、住んでいる家に裁判所の執行官が現況調査に訪れた、競売物件の情報サイトに実家が掲載されていた、兄弟から知らされた、などです。
特に兄弟の持分だけが対象の場合、通知が届くのは債務者である兄弟であり、ご自身のもとには届きません。そのため、本当に競売にかけられているか確証がない段階でも、まず自分の手で事実を確かめることが重要です。
1-1. 登記簿で差押え・債権者・事件番号を確認する
最初に行うのは、不動産の登記事項証明書(登記簿)の取得です。登記簿は誰でも取得でき、競売の当事者ではないご自身でも、兄弟の持分に入った差押えを確認できます。
登記簿上で確認すべきは以下の3つです。
- 差押えの内容
- 申立債権者
- 登記原因に併記される事件番号
記載されている場所は、登記簿上の権利部(甲区)です。事件番号がわかったら、まず裁判所の「不動産競売物件情報サイト(BIT)」で検索してみましょう。売却の公告段階に入っていれば、物件の評価額や入札期間・開札日、現況調査の内容を、当事者でなくても誰でも確認できます。
まだ情報が出ていない段階なら、競売を担当する地方裁判所(執行裁判所)の競売係に、事件番号を伝えて進行状況を聞くこともできます。ただし、兄弟のローン残債額など事件記録の中身を見るには、裁判所に出向いて記録を閲覧・謄写する手続きが必要で、原則として利害関係人に限られます。
集めた情報は、後で弁護士や専門業者へ相談する際の土台になるため、まずは現状を正確につかんでおきましょう。
なお、登記事項証明書の取得方法については、法務局の公式ページをご確認下さい。
1-2. 競売の対象が「兄弟の持分だけ」か「不動産全体」かを確認する
次に、登記の内容から、競売の対象が「兄弟の持分だけ」なのか「不動産全体」なのかを確認します。
競売の対象が兄弟の持分だけであれば、まだ落札されていないか、すでに落札されたかによって対処が異なります。落札された場合のリスクも含め、2章以降で段階を追って解説します。
一方、不動産全体が競売にかけられている場合もあります。亡くなった親の住宅ローンが団体信用生命保険で完済されずに残ったまま相続した、あるいは相続後に兄弟と連帯債務でローンを組み、全体に抵当権を設定したといった事情が該当します。ただし、誰がどこまで責任を負うかは、債務の相続のしかたや金融機関との取り決めによって異なります。該当しそうな場合は、弁護士や司法書士に個別に確認してください。
また、ご自身が兄弟の借金の連帯保証人になっていて、預金や給与を含む財産まで差し押さえられている場合は、共有持分だけの問題ではありません。借金そのものの整理が先決となるため、まずは弁護士に相談しましょう。
兄弟の持分が落札されたあとに起きること

競売と言われても、自分にどんな不利益があるのか、すぐにはイメージしにくいかもしれません。
兄弟の持分が落札されると、見知らぬ第三者と実家を共有することになり、買取交渉・費用負担・訴訟といった不利益が、ご自身に直接およびます。共有持分だけの物件は一般の個人には使い道がなく、実際に落札するのは権利関係の複雑な不動産を扱う買取業者や投資家が中心です。利益を目的とする相手だからこそ、共有関係の解消を求める動きが、交渉から訴訟まで段階的に進むことが予想されます。
本章では、落札されたあとにご自身の身に起きることを詳しく解説します。対処法を急ぐ方は、まだ落札される前であれば3章、すでに落札されている場合は4章へ進んでください。
2-1. 落札業者から買取・売却交渉を持ちかけられる
兄弟の持分を落札した業者は、持分だけでは物件全体を活用することも、自由に売却することもできません。
持ちかけられる内容は、大きく分けて二択です。ご自身の持分を相手に売るか、相手の持分を買い取るか。交渉がまとまらない場合は、後述の共有物分割請求訴訟に進むこともあります。
業者や投資家の目的は、物件全体を取得して売却したり活用したりして得られる利益ですので、ご自身の持分をできるだけ安く買い取ろうと、本来の市場相場より安い価格を提示してくるケースが多く見られます。
しかし、不動産や法律にくわしくない個人が、交渉に慣れた業者を相手に価格を引き上げていくのは、簡単なことではありません。
2-2. 居住の有無に応じて賃料や維持管理費を請求される
新しい共有者からは、ご自身の状況に応じて、賃料相当額や維持管理費の支払いを求められる可能性もあります。
家族で所有する実家に住んでいた間は、家賃が問題になることはなかったかもしれません。しかし、第三者が共有者として加わると、ご自身の持分を超えて家を使っている分について、賃料相当額の支払いを求められることがあります。誰も住んでいなければ、実際に使っている人がいない以上、賃料は発生せず、持分を持っているだけで家賃を請求されることもありません。
一方、固定資産税や維持管理費についても、共有者が第三者に変わると、持分相当の負担をはっきり求められるようになります。それまでは兄弟が代表者としてまとめて納付していて、ご自身に請求が来ていなかったとしても、法律上は持分割合に応じて負担すべきものと定められているからです。
賃料相当額や維持管理費の負担は、買取や売却の交渉と結びついて持ち出されることもあります。費用をめぐるやり取りが、業者や投資家の目指す共有関係解消の交渉の入り口になる場合があるためです。
2-3. 共有物分割請求訴訟を起こされる
買取や売却の交渉がまとまらなかった場合、最終手段として、新しい共有者が共有物分割請求訴訟を起こすことがあります。共有物分割請求訴訟とは、共有物をどう分けるかを裁判所に決めてもらう手続きです。
分け方には、現物分割・価格賠償・換価分割(競売)の3つがあります。最も優先されるのは「現物分割」ですが、土地を物理的に切り分ける方法のため、一戸建ての場合は通常成り立ちません。次に候補となるのが、相手が適正な価格を払って物件を単独で取得し、ご自身に持分相当額を支払う「価格賠償」です。
価格賠償もまとまらなければ、不動産を売却して売買代金を分ける「換価分割」をすることになります。全員の合意次第では、共同売却*により市場価格に近い金額で分けることもできますが、意見が合わずに競売に発展すれば、市場価格の5〜7割程度で強制的に売却されることになります。
※競売によらず、不動産仲介会社などを通じて第三者に売却し、売却代金を持分割合で分ける方法
兄弟の持分が競売にかけられた場合の対処法

前章で見たとおり、兄弟の持分が第三者に渡ってしまうと、見知らぬ共有者との交渉やトラブルに巻き込まれ、最悪の場合は実家を失い、手元に残る金額も目減りします。だからこそ、落札される前に動けるかどうかが、結果を大きく左右します。
競売は、裁判所の開始決定からおおむね4〜6ヶ月で入札・開札へと進みます。動き出しが早いほど選べる対処法は多く、遅れるほど限られていくことを、まず念頭に置きましょう。
本章では、競売の対象が兄弟の持分だけだった場合に、落札される前にできる対処法を解説します。各手段の冒頭に「条件」と「期限」を示しますので、ご自身の資金力や兄弟との関係を踏まえ、どの方法なら手が届くかを判断する参考にしてください。
3-1. 【対処法①】第三者弁済で競売を取り下げる
期限:開札日の前日まで(開札後は買受人の同意が必要)
債権者に競売を取り下げてもらう方法で、兄弟の残債と遅延損害金を全額肩代わりして一括で返済する第三者弁済が前提となります。債権者は債権を回収できれば競売を続ける理由がなくなるため、第三者弁済が済めば取り下げに応じてもらえます。
また、ローン残債だけではなく、債権者が競売の申し立て時に裁判所へ納めた予納金も引き受けなければなりません。予納金は現況調査や評価などの手続き費用にあてられるお金で、手続きが進むほど使われる額が増えるため、動き出しが早いほど負担は小さく済みます。
競売を止められる点は大きな利点ですが、ご自身で資金を一括で用意する必要があり、資金面のハードルは高いと言わざるを得ません。第三者弁済をすれば肩代わりした分を兄弟に請求する権利(求償権)自体は得られるものの、もともと残債を返済できずに競売まで至った状況であるため、立て替えた資金を後から回収できる保証はないと考えておく必要があります。
なお、競売の取り下げは、法律上は代金納付まで可能ですが、開札後は買受人の同意が必要となり、安く落札する権利を得た買受人が応じることはまず期待できないため、実務上のリミットは開札日の前日となります。
3-2. 【対処法②】自分で入札して兄弟の持分を落札する
期限:入札期間内
ご自身が競売に参加し、兄弟の持分を自分で落札する方法です。売却基準価額の20%を入札保証金として現金で用意し、裁判所が定める期間内に入札書を提出して、落札できれば残代金を指定の期日までに納めます。
ただし、共有持分の競売物件には一般的な住宅ローンを利用できず、現金一括での支払いが必要となるため、手元にまとまった資金がなければ入札に参加すること自体ができません。
さらに注意したいのは、資金を用意して入札しても必ず落札できるとは限らない点です。利益を見込む専門業者が相場以上の価格を入れれば競り負けて、持分を取得できないこともあります。
3-3. 【対処法③】自分の持分だけ売却する
期限:なし(落札後・代金納付後でも可)
第三者弁済や自己入札にあてる資金がなく、兄弟の協力も見込めない場合に最も確実な対処法となり得るのが、自分の持分だけを売却する方法です。実家を手元に残すことよりも、共有関係から早く抜け出すことを優先したい場合の選択肢といえます。
自分の持分は、他の共有者や落札した相手の同意を得なくても、単独で自由に売却できます。一般の不動産会社に仲介を依頼して買い手を探す方法もありますが、共有持分だけを欲しがる個人はほとんどいないため、買い手はなかなか見つかりません。早く、手間をかけずに手放したいのであれば、共有持分を専門に扱う買取業者へ売却するのが、実際にはほぼ唯一の方法になります。
期限の制約もないため、仮に兄弟の持分が先に落札されても、後から共有関係を抜けることが可能です。
注意したいのは価格で、買取価格は市場価格に持分割合を掛けた金額の、さらに2分の1から3分の1程度にとどまるのが一般的です。手残りは少なくなりますが、相手との訴訟リスクや固定資産税の負担を抱え込まず、共有関係から速やかに離脱できる点は大きなメリットといえます。
すでに兄弟の持分が落札されていた場合にできること

兄弟の持分がすでに落札されて第三者の手に渡っている状況でも、できることはあります。実家を残す方法と、実家を手放して共有関係から抜ける方法がありますが、いずれの場合も動き出しが早いほど条件は有利になります。
4-1. 相手の最初の提案にすぐ応じない
まず前提として重要なのが、相手から提示される条件を安易に受けないことです。先述のとおり、新しい共有者は不動産の共有状態を解消して利益を得ることを目的としており、最初は相手にとって有利な内容を提示されることも少なくないためです。
交渉を支えるのが、先に触れた共有物分割請求訴訟の存在です。話し合いがまとまらず訴訟になれば、裁判所に適正な価格を判断してもらえるため、慌てて不利な条件をのまないことが交渉の出発点です。
4-2. 【実家を残す】業者の持分を買い取って単独所有にする
実家を残したい場合は、相手の持分を買い取ることで、不動産を丸ごとご自身の単独所有にできます。
鍵となるのは資金です。相手の持分を買い取って単独所有になれば、もともとの持分と合わせた不動産全体を担保に入れられるため、共有持分のままでは付きにくい融資も受けやすくなります。
住宅ローンは自分が住む住まいの取得に限られるため、ご自身が実家に住む場合に利用でき、住まない場合は不動産を担保にする不動産担保ローンが候補となります。
4-3. 【共有から抜ける】自分の持分を専門業者へ売却する
実家にこだわらないのであれば、共有関係から抜けてしまう道もあります。ご自身の持分は、兄弟の持分が相手に渡った後でも単独で売却でき、売却先を相手に限る必要もありません。共有持分を専門に扱う別の買取業者へ売れば、相手が提示する不利な条件に縛られずに、共有から離れられます。
ただし、買取価格は共有をめぐるトラブルの深刻さに左右されます。相手と争いになる前、とくに共有物分割請求訴訟が始まる前であれば、買取業者もリスクを抱え込まずに済むため、本来の買取相場に近い価格で売却できます。
争いが長引くほど提示価格は下がり、引き受ける業者も限られていくので、抜けると決めたなら早めに動くほど有利です。
4-4. 共有物分割請求訴訟を起こされたら
兄弟の持分を取得した相手から共有物分割請求訴訟を起こされても、分け方を最終的に決めるのは相手ではなく裁判所です。裁判所は、共有関係が生じた経緯や物件の利用状況なども考慮するため、ご自身の主張や立場も結果に反映されます。
争える点は主に二つです。一つは価格で、相手が一方的に有利な金額を主張しても、裁判所は鑑定にもとづいて適正な価格を判断するため、言い値で押し切られることはありません。もう一つは売却の方法、仮に不動産を売って分けることになっても、競売ではなく共同売却を求めることができます。競売では売却額が大きく下がって相手の取り分も減るため、市場で売る共同売却のほうが双方にとって得になり、合意に至りやすいからです。
価格と方法という二つの争点を踏まえたうえで、目指す方向は、実家を残したいかどうかで分かれます。
残したいのであれば、ご自身が物件全体を取得して相手に持分相当額を支払う形になりますが、まとまった資金や融資の見通しが立つことが前提です。
手放してもよいのであれば、逆に相手へ物件全体を取得させ、ご自身は持分相当額を受け取る形に持ち込めます。価格は裁判所が定める適正な水準になるため、競売で安く売られるよりも手元に残る金額は多くなります。さらに判決を待たず、訴訟の途中でご自身の持分を第三者へ売却して抜けてしまうこともできます。
いずれの方針をとるにしても、訴訟の段階では弁護士に依頼し、見通しを立てたうえで対応を決めることが大切です。
まとめ:共有持分が競売にかけられたら一日でも早く動こう

この記事のまとめ
- 通知が届くのは債務者の兄弟なので、まず登記簿で事実確認から始める。持分だけが対象なら、自分の持分がすぐ取られるわけではない。
- 落札される前なら、第三者弁済や自己入札で競売を止められる。ただし、まとまった資金を一括で用意できることが前提。
- 落札された後でも、相手の持分を買い取って実家を残すか、自分の持分を売って共有から抜けるかを選べる。
- 共有物分割請求訴訟になっても、価格は裁判所が適正に判断し、競売ではなく共同売却を求められる。
- 自分の持分の売却はどの段階でも残る出口で、動き出しが早いほど条件は有利になる。
共有持分の競売で結果を大きく分けるのは、動き出しの早さです。早く正確に状況をつかむほど、競売を止められる可能性が高まり、落札された後でも、より有利な条件で進められます。対応が遅れるほど、実家を失い、手元に残るお金も目減りしていきます。
まずは、ご自身の状況を正確に把握することが、損失を抑える最初の一歩になります。
ご自身の状況に当てはめて考えると、「うちの場合はどうなんだろう」「この持分でも本当に売れるのかな」と、新しい疑問が浮かんでくるはずです。
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この記事のまとめQ&A
兄弟の共有持分が競売にかけられているか確認する方法はありますか?
はい。まずは不動産の登記事項証明書(登記簿)を取得し、権利部(甲区)に差押えの登記が入っていないか確認します。差押えの内容や債権者、事件番号を確認し、不動産競売物件情報サイト(BIT)で検索することで競売の進行状況を調べられます。
兄弟の共有持分が落札されるとどうなりますか?
兄弟の共有持分が第三者に落札されると、その第三者が新たな共有者になります。その後、持分の買取交渉や売却交渉を持ちかけられたり、状況によっては賃料相当額や維持管理費の負担を求められたりする可能性があります。
兄弟の共有持分が競売にかけられた場合、落札前にできる対処法はありますか?
はい。兄弟の借金や費用を一括で支払う第三者弁済によって競売を取り下げてもらう方法や、ご自身が競売に参加して兄弟の持分を落札する方法があります。ただし、いずれもまとまった資金が必要です。
すでに兄弟の共有持分が落札された場合でも実家を残せますか?
はい。落札した第三者の持分を買い取ることで、不動産を単独所有にできる可能性があります。資金が必要になりますが、住宅ローンや不動産担保ローンを利用できる場合もあります。
共有物分割請求訴訟を起こされたら必ず競売になりますか?
いいえ。共有物分割請求訴訟では、価格や分割方法を裁判所が判断します。競売だけでなく、共有者の一方が物件全体を取得して代償金を支払う価格賠償や、市場で売却する共同売却が認められる場合もあります。



