
目次
共有名義の不動産を任意売却してローン問題を解決したいけれど、他の共有者に連絡しても同意が得られず、専門家にも「全員の同意がないと難しい」と言われて手詰まりになっている方は少なくありません。住宅ローンの滞納が続き、競売が迫る中で、途方に暮れてしまうことでしょう。
しかし、不動産全体を任意売却できなくても、ご自身の「共有持分のみ」であれば、他の共有者の同意がなくても売却することが法的に可能です。
本記事では、共有者の同意なしに任意売却を進める方法があるのか、ご自身の共有持分だけを売却する選択肢にはどんなメリットとリスクがあるのかを整理して解説します。
競売が迫る前に、ご自身が取れる選択肢を判断するための材料としてお役立てください。
この記事でわかること
- 共有者の同意なしに任意売却を進められるかどうか
- 不動産全体の売却と自分の持分のみの売却の違い
- 共有物分割請求訴訟や不在者財産管理人の選任にかかる期間と費用
- 連帯債務・連帯保証・ペアローンで持分売却後に残るリスクの違い
- 共有持分の買取価格の相場と残債処理のための相談先
目次
共有者の同意なしに任意売却はできるのか

共有不動産の売却において「全員の同意が必要」とよく言われますが、ネットなどでは「同意がなくても売却できる」という情報を目にすることもあります。
ここでは、不動産全体の売却と持分のみの売却の違いや、法的なハードルについて順を追ってご説明します。
1-1. 不動産全体の任意売却には共有者全員の同意が必要
共有名義の不動産全体を売却するには、売却行為である任意売却も含めて、共有者全員の同意が必要というのが原則です。
そのため、共有者のうち1人でも同意しない、あるいは連絡が取れない場合不動産全体を対象とした任意売却は法律上進めることができません。
1-2. 「自分の共有持分だけ」であれば同意がなくても売却できる
一方で、ご自身が所有する共有持分だけであれば、他の共有者の同意を得ることなく単独で売却を進めることが法的に認められています。これは、所有者は自身の財産を自由に処分できるという原則に基づくものです。
ただし、共有持分のみの売却は一般市場での需要が低く、売却価格が低くなる傾向があります。そのため、持分売却の代金だけで住宅ローンを完済できるケースは少なく、売却と並行して残ったローン問題の整理が必要になります。この点については、4章で詳しく触れることとします。
1-3. 共有状態を整理するには時間とコストがかかる
何らかの事情でどうしても不動産全体を売却したい場合、法的に共有状態を解消する手段として「共有物分割請求訴訟」があります。これは裁判所に申し立てて、共有状態の解消を求める手続きです。
ただし、訴訟を起こして判決が出るまでには、一般的に半年から1年以上、長引けば1〜2年程度の期間がかかります。弁護士費用や裁判費用などを合わせると、数十万円から100万円以上かかるケースも少なくありません。
また、裁判所が「換価分割」の判決を下した場合は、結果として不動産が競売にかけられることになり、市場価格より大幅に低い金額での売却となるため、結果的にお互いに金銭的な損失を被ることになります。
加えて、訴訟という形を取る以上、共有者との関係はさらに悪化することが避けられません。元配偶者や親族との今後のやり取りを考えると、心理的な負担も大きい選択肢です。
共有者が音信不通の場合には、家庭裁判所に「不在者財産管理人」の選任を申し立てる方法もありますが、この手続きにも選任までに数ヶ月の時間を要します。
つまり、競売が目の前に迫っている状況では、時間的にも費用的にも、共有物分割請求訴訟や不在者財産管理人の選任といった手段をとる余裕がないことが大半です。
連帯債務・連帯保証・ペアローンで持分売却後に残るリスクの違い

ご自身の共有持分だけであれば単独で売却できるとはいえ、住宅ローンが残っている場合は売却後の債務がどうなるかが大きな問題になります。
共有名義で組む住宅ローンには主に「連帯債務」「連帯保証」「ペアローン」の3つの形態があり、どの形態で契約しているかによって、持分を売却した後にご自身に残るリスクの種類が変わってきます。
ここでは、それぞれの違いと持分売却後のリスクをご説明します。
2-1. 共有名義ローンの3つの形態
まずは、住宅ローンの契約形態の違いを整理します。
1本の住宅ローンに対して、夫婦など複数人が連帯して全額の返済義務を負う形。どちらか一方が主、もう一方が従という関係ではなく、双方が全く同等の返済責任を負います。
1本の住宅ローンに対して、1人が「主債務者」となり、もう1人が「連帯保証人」となる形。主債務者が返済できなくなった場合にのみ、連帯保証人が代わりに全額を負担する義務を負います。
夫婦がそれぞれ個別に住宅ローンを契約(計2本のローン)し、お互いが相手のローンの「連帯保証人」になる形。それぞれが独立した債務を持ちつつ、互いの債務を保証し合います。
どの形態で契約しているかによって、持分売却後に残るリスクの種類が大きく変わります。
2-2. 連帯債務の場合のリスク
連帯債務で契約している場合、ご自身の持分を売却して所有権を手放したとしても、金融機関とのローン契約そのものが解除されるわけではありません。
もし持分の売却代金でローンを完済しきれず残債が発生した場合、その残債全額について、他の共有者(元配偶者など)と連帯して返済義務を負い続けることになります。
ご自身が家を出て持分を持っていなくても、家に住み続けている共有者の返済が滞れば、金融機関からご自身に対して全額の請求が来ることになります。
2-3. 連帯保証の場合のリスク
連帯保証の契約では、ご自身が「主債務者」であるか「連帯保証人」であるかで状況が異なります。
ご自身が主債務者であった場合、持分を売却して名義を手放した後も、ローンの名義人(主債務者)としての返済義務はそのまま残ります。
一方、ご自身が連帯保証人であった場合、主債務者が毎月の返済を続けている限りは、ご自身に直接請求が来ることはありません。しかし、持分を手放したからといって連帯保証人の立場から外れることは原則としてできないため、主債務者が滞納すれば、連帯保証人として残債全額の支払いを求められます。
2-4. ペアローンの場合のリスク
ペアローンはお互いが連帯保証人になっているため、ご自身のローンがなくなっても、相手のローンに対する「連帯保証人」としての責任は解除されずに残ります。そのため、将来的に相手が返済を滞納すれば、ご自身に一括請求が来るリスクがあります。
また、ペアローンでは不動産全体に対して、2本のローンそれぞれの抵当権が設定されているのが一般的です。不動産の売却時にはこの抵当権を抹消する必要がありますが、金融機関は担保価値が下がることを嫌うため、「自分の持分だけを売却するので、自分の持分に対する抵当権だけを外してほしい」という部分的な処理には原則として応じてくれません。
いずれのローン形態であっても、持分を売却して不動産の所有権を手放したからといって、債務者や連帯保証人としての責任が完全に消えるわけではなく、形を変えて残り続けるというのが実情です。持分を売却するかどうか判断する際には、ローンの契約形態ごとのリスクを理解したうえで、「売却後に残る債務や保証人の責任をどう処理していくのか」という見通しを立てることが重要です。
任意売却か持分売却かを選ぶ際の判断基準

ここまで、共有者の同意が得られない状況で取れる選択肢として持分売却があることと、ローン契約形態によって持分売却後にも残るリスクがあることをご説明してきました。
任意売却が望ましいけれど共有者の同意が得られない、かといって持分売却にも残るリスクがある。そんな状況でどちらの手段を選ぶべきか、判断基準を比較しながらご説明します。
3-1. 判断の分かれ目は「共有者の同意が現実的に取れるかどうか」
どちらの手段を選ぶべきかの最大の判断基準は、他の共有者(元配偶者など)から売却の同意が取れる見通しがあるかどうかです。
現在も連絡が取れており、お互いに状況を理解して話し合いの余地がある場合は、残債を大きく減らせる「不動産全体の任意売却」を優先して進めるべきです。一方で、すでに連絡が取れない、売却を強く拒否されている、あるいは交渉が完全に破綻しているような場合は、いつまでも同意を待ち続けるのは危険です。その場合は、ご自身の判断だけで進められる「持分売却」への切り替えを検討する必要があります。
3-2. 手取り額・残債・スピード・同意の要否で比較
任意売却と持分売却の違いを、4つのポイントで比較します。
任意売却は市場価格に近い金額で売却できるため、ご自身の持分に相当する金額も大きくなる。持分売却は通常の不動産売却と比べて買取価格が下がる傾向にある(詳細は4章で解説)。
任意売却は売却代金が大きい分、ローン残債の圧縮効果が大きい。持分売却は買取価格が低い分、売却後に残債が残るケースが多い(詳細は4章で解説)。
任意売却は3〜6ヶ月程度かかるのに対し、持分売却は専門業者へ依頼すれば数週間〜1ヶ月程度で手続きが完結するケースが多い。
不動産全体の任意売却は共有者全員の同意が必須。持分売却は不要。
手取り額と残債への影響では任意売却が有利ですが、共有者の同意が得られない・時間的猶予がない場合は、持分売却が今すぐ動ける選択肢になります。
3-3. 共有者の同意を待つほど競売リスクが高まる
「いつかは同意してくれるかもしれない」と話し合いを続けながら時間だけが過ぎていくと、競売の手続きは待ったなしで進んでいきます。住宅ローンを滞納してから、競売の開札に至るまでの一般的な流れは以下の通りです。
- 滞納1〜3ヶ月:金融機関からの督促状や催告書の送付
- 滞納6ヶ月前後:分割払いの権利を失う「期限の利益の喪失」
- 滞納6~7ヶ月:保証会社による代位弁済(銀行への立て替え払い)
- 滞納8〜9ヶ月頃:競売開始決定・差し押さえ
- 申立1〜2ヶ月後:裁判所の執行官による現況調査(立ち入り調査)
- 申立から6〜12ヶ月後:期間入札の通知送付、入札・開札
任意売却は法的には競売の開札日前日までが期限ですが、決済・引渡しまでには通常3〜6ヶ月程度かかるため、競売開始決定通知が届いてから動き出すと時間切れになるリスクが高まります。また持分売却も専門業者との交渉・契約手続きに一定の期間が必要なため、競売の進行が進むほど選択肢が狭まってしまいます。
持分売却で買取価格とローン残債はどうなるか

ここまで見てきたように、共有者の同意が取れない状況では、持分売却が取れる選択肢として残ります。ただし、自分の持分を売却できたとしても、それでローン問題がすべて解決するわけではありません。
持分売却の買取価格はどのくらいになるのか、売却後に残るローン残債はどう処理するのかを知っておくことが重要です。
4-1. 持分売却の買取価格はどのくらいになるか
共有持分のみの売却は、通常の不動産売却と比べて買取価格が大幅に低くなります。その背景には2つの理由があります。
まず、共有持分だけを取得しても、他の共有者がいる限り不動産を自由に利用したり処分したりできません。そのため、需要が極めて低く、一般市場では買い手がほとんどつかないという構造的な理由で価格が下がります。
次に、共有持分を購入した買い手は、その後に他の共有者との交渉や、場合によっては共有物分割請求などの法的手続きを行う必要があります。買い手はこれらの後工程にかかる交渉費用や訴訟リスク、解決までに要する期間をあらかじめ価格に織り込んで買い取るため、さらに買取価格が下落します。
実際の買取提示額は、不動産全体の市場価格に持分割合を掛けた金額の30%〜50%程度(1/2〜1/3程度)になることが一般的です。
例えば、市場価格4,000万円の不動産で持分が1/2の場合、理論上の持分価値は2,000万円ですが、実際の買取価格の目安は600万円〜1,000万円の範囲になる可能性があります。売却代金が想定を下回ることもあるため、現在のご自身のローン残債を照らし合わせ、「手元に現金が残るのか」、あるいは「いくらの残債が残るのか」を試算しておく必要があります。
4-2. 売却後に残った残債は誰がどう処理するのか
持分の売却代金がローン残債を下回った場合、不足する金額については引き続き返済義務が残ります。家を手放したからといってローンが消えるわけではないという点を、持分売却を検討する前に押さえておく必要があります。
ご自身で売却後の残債について債権者(サービサーなど)と分割返済の交渉を行うことも理論上は可能ですが、共有持分の売却から残債整理までを一人で進めるのは負担が大きく、また通常の不動産仲介会社では、共有名義や住宅ローン残債が絡む案件への専門性が限定的で、十分にフォローできないケースが多くあります。
一方で、権利関係が複雑な不動産を専門に扱う買取業者には、弁護士などの専門家と連携している会社もあります。連携体制が整った業者であれば、「持分の売却」と「ローンの整理」を切り分けてサポートできるケースがあります。
競売が迫る中で残債を抱えるリスクを軽減するためには、不動産を手放して終わりではなく、売却後の残債処理まで含めて見通しを立ててくれる専門業者へ相談することをおすすめします。
まとめ:共有持分の売却とローン残債の整理はラクウルへご相談ください

この記事のまとめ
- 不動産全体の任意売却には共有者全員の同意が必要
- 自分の共有持分のみであれば同意なしで単独売却が可能
- 共有物分割請求訴訟や不在者財産管理人の選任は時間と費用がかかる
- 連帯債務・連帯保証・ペアローンごとに持分売却後のリスクが異なる
- 持分売却後もローン残債が残るケースが多く、残債処理まで対応できる業者選びが重要
共有者の同意が得られず任意売却を進められない、ローン残債をどう整理すればいいか分からない。そうした状況をご自身一人で抱え込む必要はありません。
【ラクウル】は、共有持分の買取を専門に扱っています。弁護士などの専門家とも連携しながら、共有持分の売却と、売却後に残るローン残債の整理まで、ご相談者様の状況に合わせて切り分けたサポートをご提案しています。
「自分のケースで持分はいくらで売れるのか」「売却後に残るローンはどう処理できるのか」。まずはご自身の状況を整理する材料として、無料相談をご活用ください。
この記事のまとめQ&A
共有者が任意売却に同意しない場合でも不動産は売却できますか?
不動産全体を任意売却するには共有者全員の同意が必要ですが、自分の共有持分のみであれば他の共有者の同意がなくても単独で売却することが可能です。
共有持分だけを売却した場合、住宅ローンの支払い義務はなくなりますか?
いいえ。共有持分を売却しても、住宅ローン契約上の債務者や連帯保証人としての責任は原則残ります。連帯債務・連帯保証・ペアローンなど契約形態によって、売却後も返済義務や保証責任が継続するケースがあります。
共有持分の買取価格はどのくらいになりますか?
共有持分のみの売却は一般市場で需要が低いため、不動産全体の市場価格に持分割合を掛けた理論価格の30~50%程度になることが一般的です。
共有物分割請求訴訟にはどのくらい時間と費用がかかりますか?
共有物分割請求訴訟は、判決まで半年~1年以上かかるケースが多く、弁護士費用や裁判費用を含めると数十万円~100万円以上かかる場合もあります。
共有者の同意を待ち続けるとどんなリスクがありますか?
住宅ローンの滞納が続くと競売手続きが進み、差し押さえや競売開始決定へ進行する可能性があります。共有者の同意を待っている間に時間切れとなり、任意売却や持分売却の選択肢が狭まるリスクがあります。



